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ゴリ押しした引退試合?【大島康徳の負くっか魂!!第84回】

 

引退試合で胴上げされてる大島です


ナオミさんの一押し


 平成最後の日本シリーズ、広島ソフトバンクの熱戦が続いています。この号が出るころには決着がついているはずですが……いや、初戦も引き分けだったし、もしかしたら10戦くらいまで続いていたりしてね。これまでも、広島の日本シリーズは接戦が多いですから。

 1、2戦を見て感じたのは、「やはり野球は投手」です。特に1戦目のリリーフ陣の踏ん張りは、両軍とも完ぺきでした。見ごたえがありましたね。これについては、次の号あたりで、解説者としてたっぷり分析してみたいと思います。

 前回は、1994年シーズン限りで僕が現役引退を決意するまでの話でした。何度も書くと未練がましく聞こえるかもしれませんが、打撃開眼し、「代打の神様」と呼ばれてもおかしくないくらい打ちまくったシーズンです。ああ、もったいない。

 ただ、なぜか大島の行くところ事件(?)が起こります。実は、引退試合でもすったもんだがありました。

 球団からは最初、「3人一緒で引退試合をします」と言われたんですよ。退任する大沢啓二監督と、引退を決めていた柴田保光(ノーヒットノーランもマークした好投手)が一緒と。正直、「何だ、それ」と思いました。『在庫一掃セール』じゃないんですから、まとめてなんて、ちょっと乱暴じゃないですか。せめて大沢監督とは分けてほしかった。

 ただ、いまさらあれこれ文句を言うのも嫌だなと思って、最初は「分かったよ」と答えました。

 でも、それをナオミさん(愛しの妻です)に言った途端、「ええ! そんなのおかしいよ!」とプンプンです。僕は、「どうせ、こんな球団なんだ(そのときは本気でそう思ってました)。そんな扱いなんだから仕方ないだろ」って言ったんですが、ナオミさんが聞かない。

「今まで中日日本ハムと応援してくださった方がたくさんいる。そんな皆さんに、ちゃんと自分の言葉で伝える場所を作ってもらったほうがいいよ」と。

 僕が「俺も、それはそう思うんだけど……」と口ごもったら、「そう思うなら、球団にちゃんと意思表示したほうがいい! 絶対!」って。

 この人は、僕が迷っていると絶妙のタイミングで背中を押します。

 確かにそうですよね。応援してくださった、たくさんの人に支えられた野球人生ですし、球団のために全力で尽くしてきました。ケンカ別れするわけでもないのに、これはないだろうという思いがフツフツ湧いてきました。そうなると、もう一人の腹が据わった僕が出てきます。

「よし、そうだな!」と、球団に殴り込み(というほど大げさじゃないですが、それなりに覚悟を決めて)、「3人一緒の引退セレモニーなんて無理だ! 俺一人であいさつさせてくれ! 俺はファンに伝えたいことがたくさんあるんだ!」って言ったんです。

 そしたら「今までそんな選手いなかったんで無理です。やったことないし、無理です」と、昔のお役所みたいなことを言う。

 こっちはもうカッカしてますから止まらない。最後はもう、ごり押しみたいなものです。

「俺は引退試合を1人でやるんだ、やらせなさい。分かったね」って。

引退後の初仕事は……


 結局、僕の引退試合は単独で9月28日のロッテ戦(東京ドーム)になり、見事というか、餞別(せんべつ)をいただいたというか、伊良部秀輝から2安打をし、涙のお別れとなりました。

 気分すっきりというわけではありませんでした。でも、東京ドームで胴上げされているうちに、何だか「まあ、いいっか!」になってました。

 翌29日のロッテ戦では、柴田が始球式をし、試合後には大沢監督が土下座パフォーマンス(最下位を詫び、マウンドで土下座した)で大いに盛り上がった(?)。いろいろな意味でよかったんじゃないですか。僕もゴネた甲斐がありましたよ。

 でも、引退試合で少し失敗したんです。マウンドの前のマイクであいさつをしてからライトスタンドの日本ハムファンの前に行ったんですが、相手チームだったロッテのファンも帰らずに僕を待っていてくれたことが分からなくて、そのまま、引き返しちゃったんです。あとで知って、すごく後悔しました。

 これもナオミさんに「やっぱり、あなたは最後まで詰めが甘いんだから!」って言われています。

 このときは、その先なんてまったく考えてなかったですね。球団から引退勧告されたとき、実はコーチの要請があったんですが、断りました。何だかその気になれなくて。

 ただ、この後すぐグラウンドで、“ある人たち”をコーチしたんですよ。10月11日、川崎球場です。素振りの手本からトス打撃、フリー打撃まで、じっくり。

 誰を教えたか分かりますか? この連載をずっと読んでいただいている人ならピンときたでしょう。「SMAP」です。

 テレビ東京系の番組『愛ラブSMAP』の中での『俺たちのベースボール・ストーリー』というコーナーがあり、その収録のためでした。みんな熱心で驚きましたね。

 以前も書きましたが、ここからほんの少しですが、中居正広君との接点が生まれたわけです。

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