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中日・郡司裕也インタビュー 目指すは「勝てる捕手」 「何から何まで課題だらけ。今度はプロで日本一を目指します」

 

ルーキー捕手として開幕一軍を果たしたものの、3試合に出場したのみで、すぐに二軍行きを命じられた。だが、それは自分自身をしっかり見つめ直す時間となった。濃密だった1カ月の二軍生活で得た自信と収穫を胸に、再び一軍の大舞台へと戻り、存在感を見せている。チームを勝利に導く捕手を目指し、日々奮闘中だ。
取材・構成=牧野正 写真=大泉謙也、松村真行、井田新輔

無我夢中のルーキーイヤー。自分の課題に向き合い、がむしゃらに取り組む


恐れる必要は何もない


 ドラフト4位で慶大から入団した期待のルーキー捕手は、6月23日のDeNA戦(横浜)でプロ初打席初安打を放つと、2日後にはスタメンマスクをかぶった。ドラフト3位で東芝から入った岡野祐一郎とのルーキーバッテリーは、しかし5回5失点。チームも敗戦を喫した。28日の広島戦(ナゴヤドーム)を最後に二軍降格。悔しさはあったが、実力不足は痛感していた。武山真吾二軍コーチの指導の下で「頭を整理できた」ことで、わずか1カ月ではあるが、再び戦う準備が整った。8月10日に一軍へ昇格すると先発マスクで6連勝。投手の良さを引き出すリードが光っている。

――開幕から3カ月が過ぎようとしていますが、ルーキーシーズンのここまでを振り返って。

郡司 開幕一軍に入りながら、一度はファームに落ちたのですが、それが自分の中では良い経験になりました。ファームでたくさん試合に出場することができ、練習もできて、自分を見つめ直すきっかけになったと思います。(一軍に)また上がってきて、自分がマスクをかぶった試合も勝てるようになってきてうれしいですが、まだまだ自分の中ではレベルアップが必要だと思っています。

――ルーキー捕手として開幕一軍を果たしたときの気持ちは。

郡司 もちろんうれしかったですし、早くスタメンで出場したいなという気持ちもありましたが、一方で今ひとつ自信を持てない自分もいました。スタメンマスクをかぶったDeNA戦は、自分の中でプロというものを大きく感じ過ぎてしまって、打たれない気がしなかったというか、どうしよう、どうしようという気持ちで余裕がありませんでした。今はそんなこともなくなり、だいぶ慣れてきたんですけど。

――それでもわずか3試合で二軍行きとなったのは残念だったのでは。

郡司 もちろん落ちたくはなかったし、残念だったんですが、結果的には良かったです。春のキャンプからずっと気が張っていましたし、一軍にいるとなかなか実戦が積めない。細かい練習もできていなかったので、そういう時間が取れるようになったのが大きかったです。自分を見つめ直すというか、取り戻すことができました。

――武山二軍コーチにいろいろと指導を受けたそうですね。どの部分を一番言われましたか。

郡司 配球の部分です。かなり細かいところまで指導していただきました。

――具体的に、どんなことですか。

郡司 抑えよう抑えようという気持ちが強いと、逆に打たれるよと。もちろん打たれて良いわけはないけれど、一軍ではそう思ってできなかった配球を二軍なら試すことができるというか、やってみてもいいんじゃないかと。それを最初に言われて少し気が楽になりました。思い切った攻めの中にも“遊び心”があっていいんだよと。それでリードの幅が広がったというのはありますね。

――気持ちも楽になったと。

郡司 抑えよう、失敗してはいけない、うまくやろう、そういう気持ちは大切ですけど、そこが少し強過ぎたんだと思います。その部分で余裕がなかったんだなと。大胆な攻めというのも必要だと気づきました。自分で自分を狭くしていたように思います。

――二軍では打撃で3割を超える成績を残しましたが(15試合、打率.303、1本塁打、4打点)、この成績については。さすが東京六大学の三冠王という声も。

郡司 あまり気にしていません。

――二軍の成績は関係ないと。

郡司 それもありますし、自分は捕手なので、そこが一番の評価になると思いますから。打てるに越したことはないですけれど、やっぱり一軍で成績を残さないといけないと思っています。

―― 一軍のレベルというものは、やはり違いますか。

郡司 違いますね。でもやることをしっかりやって、間違えてはいけないところを間違わなければ、しっかりと抑えられるし、恐れる必要は何もないと思っています。

打撃向上は正捕手への近道。シュアな打撃でアピールしたい


チームの勝利が最優先


 気づいたときには捕手だった。小学3年生のころ、自分でコーチに「捕手をやりたい」と申し出た。どうしてそんなことを言ったのかはもう忘れてしまったが、それから捕手一筋の野球人生だ。仙台育英高、慶大では四番主将を務めたことからも分かるように、打撃力があり、チームリーダーに向いている。それは郡司の大きな武器でもあるだろう。そしてその球歴を振り返るとき、中学、高校、大学とどの世代でも日本一を経験している事実は見逃せない。周囲は郡司のことを「持っている」と言う。中日は2013年から7年連続Bクラスに沈んでいる。「持っている」ルーキーの入団は心強い。

――昨秋のドラフトで中日に指名された瞬間の気持ちを教えてください。

郡司 捕手には誰がいたかなと(笑)。谷繁(谷繁元信)さん以降、正捕手が固定されていないチームなので、自分も頑張ればチャンスはあるかもしれないと思いました。

――春季キャンプから正捕手争いに加わっていましたが、ほかの捕手のことは気になりますか。

郡司 気にならないと言えばウソになりますけど、それよりもやっぱり自分のことで精いっぱいでしたし、それは今もそうですね。

ずっと捕手として野球を続けてきた。「不器用なんで、もう捕手以外のポジションはできないと思います」


――外国人捕手のアリエル・マルティネスが支配下登録されて活躍しましたが、そのときの気持ちはどうでしたか。

郡司 打撃もいいですし、自分の持ち味とかぶってしまうなと(笑)。何とか追い抜かないといけないと思いましたが、特に焦りはなかったです。

――プロの水にも慣れてきたころですが、何が一番大変ですか。

郡司 こんなに毎日、試合があるんだということですね。毎日、試合ばかりしている感じです。今日も試合、明日も試合という感じで、先発マスクが続くと、もう夜は一瞬で寝てしまいます。体もそうですし、脳が疲れます(笑)。捕手として常に明日の試合のことを考えないといけないのがしんどいです。

――現在の一番の課題は何ですか。

郡司 課題だらけです。スローイング、ブロッキング、キャッチング、それにバッティング……一番と言われても困りますね。何から何まで課題だらけですから。

――捕手としてのやりがいを教えてください。どんなときが一番うれしいですか。

郡司 勝った瞬間です。それ以外にないです。試合中は大変なことが多くて少しも気が抜けない。やりがいも同じ。チームに勝ちをつけること。捕手の評価というのは試合に勝ったか負けたかだけなので。いくら打っても守っても、負けてしまっては意味がないと考えています。

――理想の捕手像は。

郡司 ずっとチームを支える捕手になりたいですね。あいつがマスクをかぶって打たれたり負けたりしたら、もうそれは仕方がないと誰にも思ってもらえるような、そういう信頼される捕手になりたいです。

――どの世代でも日本一になってきました。ファンのためにもプロでもぜひ日本一になってください。

郡司 日本一になれたのは仲間に恵まれてきたからです。もちろんプロでも日本一になりたい。自分が入って日本一になったら「郡司が入団したからだ」みたいに思ってもらえて自分の価値も上がると思うので(笑)、そこは狙い目だと思っています!

郡司裕也の現在地&ターゲット



【現在地】日替わりスタメン
【ターゲット】正捕手の座

 ルーキー捕手にして開幕から一軍ベンチ入りを果たす。すぐにスタメンマスクをつかんだものの、出場機会を増やし、経験を積むために二軍へ。約1カ月に及ぶ二軍生活では、捕手としてのレベルアップを目指し、試合に練習に徹底的に取り組んだ。アピールポイントでもある打撃でも3割を超す成績を残し、満を持しての一軍昇格。シーズン序盤は育成から支配下登録されたアリエル・マルティネスがマスクをかぶって注目を集めたが、チームの正捕手はいまだ定まっていない。ルーキーらしくハツラツとしたプレーで「1試合でも多く出場してチームの勝利に貢献すること」が残りシーズンの目標だ。

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