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カープの終盤戦を盛り上げる鈴木誠也選手、坂倉将吾選手【立浪和義の超野球論】

 

鈴木[右]と坂倉の活躍がストレスの多かった今季のカープファンの楽しみにも


史上3人目の記録達成も


 9月12日現在、最下位に甘んじ、優勝は絶望的になってしまった広島ですが、2人のバッターが元気に打ちまくっています。

 1人は日本タイ記録まであと一歩、6試合連続本塁打をマークした鈴木誠也選手です。今さら言うまでもありませんが、長打力もアベレージも兼ね備えた日本を代表するバッターの一人です。現在、28本塁打で6年連続25本塁打以上となりましたが、これに6年連続打率3割が加わると、王貞治さん(元巨人)、落合博満さん(元ロッテほか)に次ぐ史上3人目の記録になるそうです。今の打率が.314ですから、こちらの達成の可能性も十分にあります。

 今季は開幕から大きく足を上げるフォームに変えました。本人と話したわけではありませんが、より上のレベルを目指し、体の近くまで呼び込んで強い打球を打ちたいという意識からだと思います。ただ、結果的にはタイミングがうまく取れず、呼び込む間がつくれぬまま打ち損じが目立つ結果となりました。

 そのあと以前のフォームに戻しましたが、前半戦は不振が続き、タイミングがバラバラになっているように見えました。責任感の強い選手なので、チームの不振の責任を一身に背負ってしまったのかもしれません。

 彼の最大の長所は芯に当たればすべてスタンドまで持っていけそうな強烈なスイングスピードです。ただ、もともとバットのトップが投手側に入るフォームなので、どうしてもバットが下から出るため、うまく間がつくれないと差し込まれることもありました。また、以前から調子が悪いと軸足に乗る時間が短くなり、ステップが広がる傾向がありましたが、今季もそれを感じました。

坂倉の首位打者は


 しかし東京オリンピック後の後半戦、特に9月に入ってからですが、ステップが狭くなり、スイングが体から離れず、インサイドからしっかりボールをとらえられるようになっています。

 四番に座る鈴木選手の復調は技術面の修正に加え、三番の西川龍馬選手、五番の坂倉将吾選手と、前後の打者をはじめ、打線全体の好調さで鈴木選手が乗っていくことができ、また集中していた相手バッテリーの警戒が散ったこともあると思います。特に大きいのは、ずっと隠れ首位打者候補と呼ばれ、規定打席に達した坂倉選手の存在でしょう。彼があとに控えていれば、鈴木選手相手に「歩かせてもいいから」という攻めはしづらくなってきたと思います。

 以前から高い打撃センスに注目していた坂倉選手ですが、捕手というポジションには會澤翼選手がいたことで、なかなか出場機会を増やせずにいました。それが會澤選手の故障で出場機会を増やし、今は一塁と併用ですが、五番打者に定着しています。

 坂倉選手はスイングスピードの速さに加え、ステップが広くならず、軸回転のスイングができています。結果、ホームランがあり、また、広角に強い打球をはじき返すこともできています。9月7日の中日戦(マツダ広島)でR.マルティネスの高めストレートをかぶせるようにしてサヨナラホームランにした技術も見事でした。

 現在、打率は1位のオースティン選手(DeNA)の.329に1分2厘差で2位の.317ですが、安定感があり、十分タイトルは狙っていけます。負担の大きな捕手というポジションで首位打者となれば、これもまた、素晴らしいことだと思います。

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