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シーズン途中の配置転換はチームがピリッとするからな。交流戦は優勝にかかわる。軽く見たらあかんのよ【岡田彰布のそらそうよ】

 

2010年、オリックスの監督に就任したオレは1年目でいきなり交流戦優勝を飾った。監督として交流戦は得意なほうやった[写真=BBM]


優勝予想の中日 やはり打線が苦戦して……


 オレが優勝予想した中日は苦戦している。原因ははっきりしている。懸念していた攻撃力の不足である。優勝を狙う条件はここの改善しかない。新しい外国人をもうひとり……と願っていたが、それは叶わない。となれば、今の戦力を向上させること。立浪(立浪和義)監督の悩みどころはそこに尽きる。

 さあ、どうする? 監督として、いろいろなことを考える。オレもそうやった。二軍からイキのいい若手を上げるとか、打線を組み替えるとか、ホンマ、なんでもやった。それでもうまく働かないのが野球。立浪監督も我慢のしどころやろな。

 そんな中、打撃コーチの一、二軍入れ替えがあった。中村(中村紀洋)コーチが二軍で波留(波留敏夫)コーチが一軍に。この人事がいろんな憶測を呼んでいるとか。そんなこと、あるのかないのか、内部のことやから、とやかく言うことはない。チームにはいろんな事情がある。それを詮索しても仕方がないけど、オレは今回の入れ替え、アリやと考えている。実際、オレも監督時代、コーチの変更を探ったことがあった。シーズン中でも、それが現状の正解であれば、監督として決断する。当然のことよ。

 うまくいかないから、打開策を求める。それが今回の人事。このことがチームにどう影響するのか……。少なくともマイナスにはならない。刺激というのかな、テコ入れはプラスに働く。そう考えないと、断行した意味がない。コーチが変わったからといって、劇的に変化するわけではないけど、打線は間違いなくピリッとする。これも大きな狙いなわけで、今後、中日の様変わりに期待したいものだ。

 まあ前段はこれくらいにして、今週号の特集はスタジアムとのこと。育った球場について語ってほしい、との指令だが、オレの場合はやっぱり甲子園。何といっても、甲子園は日本一の球場やとオレは思っている。

 高校球児にとって「聖地」と呼ばれる甲子園。それはプロの世界でもそうやろな。どこの球場と比べても、まず雰囲気が違う。それは独特の香り……というのか、空気感が素晴らしいのだ。風が右から左に流れる浜風、自然が作り出す条件は、ここでしか味わえないものよ。芝が緑、内野の土のグラウンド、土質がいい。時に打球がイレギュラーするときもあるけど、これも自然との勝負。甲子園で守れたら、人工芝のほかの球場では楽に感じたりもする。

 ファウルゾーンが広く、ネット裏の銀傘もいい。何もかも最高のスタジアム。それが甲子園とオレはずっと感じてきたし、いまもそれは変わらない。

 それと阪神には二軍専用の球場と寮が鳴尾浜というところにある。二軍の設備の充実。これは重要なことだが、阪神は新たに球場を移設することになった。鳴尾浜の地盤の問題もあると聞いたが、新しいところは尼崎市内。そうそう、オレが入団したころ、当時の小津(小津正次郎)球団社長が、尼崎の浜田車庫に練習場を作った。オレも3、4年、その球場で練習した記憶がある。阪神の場合、春と夏、甲子園を高校球児に明け渡す。その期間、練習をどうする、という問題があり、こういう設備は必要不可欠なわけ。今回の移転、そら、二軍の選手にとっては最高の環境になるに違いない。ここから若い選手が成長していく中で、新たな歴史を刻んでいくことになる。

たかが18試合やけどされど18試合なんよ


 球界はというと、いよいよ交流戦が始まった。今シーズンは18試合制。143分の18だから、さほど影響はないと思われがちだが、それは間違い。交流戦は大きな影響が出るイベントやと思う。同じリーグで5チームが負け、ひとつだけ勝つといったケースがある。これによって順位に変動が起きることになり、交流戦を勝ち抜けることによって、レギュラーシーズンの様相が一変する。その可能性を秘めているから、ホンマ、おろそかにできないわけよ。

 このセ・パ交流戦が始まったのが2005年から。オレが阪神の監督2年目のシーズンからで、その年、リーグ優勝できた。実際、初めての交流戦もうまく戦えたし、ここでライバルに差をつけた。以来、オレの中で交流戦は得意期間というイメージを持つことができた。阪神の監督が終わり、2010年から3年、オリックスの監督を務めたが、いきなり交流戦優勝。自分なりに戦い方が分かっていた。

 とにかくデータが半端ない。スコアラーからの資料が膨大で、これをゲームの中でどう生かしていくか。ここもポイントになるが、反対のことも重要になってくる。経験していくうちに、それに気づいた。「直感」というのかな。データには表れない勘のようなものなんよ。オレはこれも大事にした。ストレートに強い、というデータの打者に対し、あえて裏をかいて真っすぐで押すなど、場面、場面で湧いてくるイメージを大切にした。このベンチワークも交流戦の醍醐味といえるやろな。

 7年間、オレはセとパで交流戦を経験したけど、下位だったのは確か1度だけやったと思う。交流戦の鬼……なんて言われたこともあったけど、ここの成績がモロにリーグ戦に反映するから、ホンマ、大事に戦ったもんですわ。果たして今シーズン、交流戦を足場にどこが躍進していくのか、じっくりと見ていきたい。(デイリースポーツ評論家)

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