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“一打無敵”のご意見番が球界を斬る 張本勲の喝!!

張本勲コラム「“大事にする”と“甘やかす”はまったく違うということを肝に銘じなければならない」

 

今年の夏の甲子園も大いに盛り上がっているが、議論すべきことは数多い


伝統を守るためにも原点に立ち返れ


 夏の甲子園も佳境を迎えた。順調にスケジュールが進んでいれば、あとは決勝を残すのみだ。

 今年も真夏の炎天下にもかかわらず、甲子園には連日たくさんのお客さんが詰めかけている。中には1日に2試合、3試合と観戦する人もいるという。本当に野球というスポーツは日本人に愛されているのだと思うし、そうした人たちが野球界を支えてくれている。本当にありがたいことだ。甲子園を目指して球児たちが汗を流し、切磋琢磨する高校野球の伝統はこれからも続いていってほしいと思う。

 それだけに、高校野球はもう一度、原点に立ち返る必要がある。101回目となった今年の甲子園でも、そう感じる残念な場面をいくつか目にした。

 まずガッツポーズはやめさせなければならない。今の時代に限らず、どの競技においても、日本のスポーツは礼に始まり礼に終わるものだ。思わず小さく握り拳を作ってしまうくらいは仕方がないかもしれないが、肩より上に腕を挙げて、まるで「お前をやっつけてやった」というようなポーズをとるのは、相手に対する礼に欠けている。ニタニタと笑顔を浮かべている選手もそうだ。瞬間的に笑みがこぼれるのはかまわないし、仕方がない。だが、いつまでも笑っているのは決していいことではない。

 私事だが、1980年に川崎球場での阪急戦で、山口高志から日本プロ野球史上初となる通算3000安打をホームランで達成することができた。私は思わずヘルメットを投げて喜びを露わにしてしまったのだが、あとから映像を見直して山口に申し訳ないことをした、礼を欠いていたという思いにとらわれた。後日、山口にそのことを謝ると、彼は「いえいえ、よかったですね」と返してくれた。その言葉を聞いて、私は非常に安堵したことを覚えている。

 言うまでもなく、野球は相手があって初めて成り立つスポーツだ。勝った側は負けた相手を労(ねぎら)い、負けた側は勝った相手を称賛し、敬愛する。それがいつの時代も日本のスポーツ界のあるべき姿であり、美徳なのだ。ましてや高校生であればなおさらだし、監督をはじめとする周囲の大人たちは、まずそうしたことを指導していかなければならない。

 甲子園は全国の高校球児たちの誰もが出たいと思う、あこがれの舞台だ。甲子園の地に立つことができた選手たちは、あとに続く球児たちにとってあこがれの存在にもなる。私は浪華商高(現・大体大浪商高)2年の夏に・・・

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“一打無敵”のご意見番が球界を斬る 張本勲の喝!!

球界きってのご意見番として活躍する野球評論家の張本勲氏が週刊ベースボールで忖度なしの喝を発信。球界の未来を考えた提言を展開する。

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