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“一打無敵”のご意見番が球界を斬る 張本勲の喝!!

張本勲コラム「夏の甲子園中止には言葉もない。プロの選手たちはファンの存在を忘れないで全力で戦うこと」

 

プロ野球は開幕もしばらくは無観客試合として開催される


甲子園という夢


 5月半ば、春に続いて夏の甲子園も正式に中止となった。残念でならない。高校3年生にとっては甲子園へのラストチャンスだったはずだ。17〜18歳と言えば青春の真っただ中。甲子園を目指し、そこに青春のすべてをかけてきた球児たちの無念を思うと胸が痛む。

 野球だけではない。その前には高校総体(インターハイ)の中止も発表されているから、高校3年生の無念は同じだ。ただ、相手は人の命を奪ってしまう新型コロナウイルスである。何度も書いているが命より尊いものはない。これも運命だと受け入れるしかないのだが、そんな言葉を今かけるのも酷だろう。

 私も高校時代は甲子園を目指していた球児の一人だった。甲子園に行ってプロへ行く。プロへ行った契約金で親孝行をする。その一心だった。地元の広島の高校を飛び出し、甲子園の常連で強豪校でもあった浪商(現大体大浪商)に編入したのも、そのためだった。

 3年生の夏、私のいた浪商は甲子園出場を決めた。私は副キャプテンだった。しかし、その輪の中に私はいなかった。部内での暴力事件に関与したとされ、地方大会から出場を許されていなかったからだ。完全な濡れ衣だったが、どれだけ説明しても分かってもらえなかった……。

 浪商に来てから甲子園出場だけが目標だった。そのために毎日毎日、夜遅くまで苦しい練習を積んできたのだ。2年生の春夏、3年生の春も甲子園には行けなかった。だから最後のチャンスにかけていたのだが、それさえも理不尽な理由から奪われてしまった。悔しくして悔しくて死にたいとさえ思った。あのときの悔しさは今でも忘れていない。それほど甲子園出場というのは私の中で大きな夢であり、目標だった。

 だから私には彼らの気持ちがよく分かる。青春のすべてを甲子園にかけてきた。それを奪われてしまった失望感。言葉にならないくらいのショックだろう。

 ここは大人の出番ではないか。高野連は何か高校球児たちの思い出に残るようなゲームを真剣に考えてもらいたい。「仕方がない」「残念だった」で済ませてしまっては何も残らない。別に夏にこだわらなくてもよいではないか。秋になっても冬になろうとも野球はできる。何とか甲子園の土だけでも踏ませてあげることはできないのか。あるいは似たような体験をさせてあげることはできないのか。あの手この手を模索し、高校球児たちの気持ちを何とか救ってやってほしい。

 ただ、新型コロナウイルスの感染が完全に終息したわけではない。これを忘れてもらっては困る。今一番怖いのは・・・

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“一打無敵”のご意見番が球界を斬る 張本勲の喝!!

球界きってのご意見番として活躍する野球評論家の張本勲氏が週刊ベースボールで忖度なしの喝を発信。球界の未来を考えた提言を展開する。

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