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“一打無敵”のご意見番が球界を斬る 張本勲の喝!!

張本勲コラム「プロ入りは同期入団も3歳年上の先輩。セパ両リーグで初の首位打者であり、豪快で繊細だった江藤慎一さんの思い出」

 

江藤慎一[左]と王貞治。球界を代表する大打者だ[写真=BBM]


王貞治の三冠阻止


 長いプロ野球の歴史の中でセ・リーグとパ・リーグの両リーグで首位打者になった選手は、これまでにわずか2人しかいない。江藤慎一(中日ほか)さんと、今もなお現役の内川聖一(ヤクルト)だ。江藤さんは1964、65年に中日、71年にロッテで、内川は2008年に横浜、11年にソフトバンクでタイトルを獲得している。

 この記録の難しさは両リーグに在籍しなければならない点だろう。いくら好打者であっても1球団一筋では達成できない記録。運も必要ということになる。実は私にもそのチャンスがあった。パで7度の首位打者に輝き、移籍した巨人でも結果を残したのだが、76年は谷沢健一(中日)、77年は若松勉(ヤクルト)に敗れてともにリーグ2位の打率。特に谷沢には6糸差だったから、惜しかったと言わざるを得ない。

 そこで今回は史上初、両リーグで首位打者となった江藤さんの話をしよう。江藤さんは1937年生まれで私より3歳上の先輩になるが、気心が知れた間柄だった。プロ入りは私と同じ59年。高校卒業後は日鉄二瀬という九州のノンプロで3年間過ごしてからのプロ入りだった。同じ日鉄二瀬の同期には、のちに広島の監督となる古葉(古葉竹識)さんがいる。江藤さんは中日に入団すると、1年目から中距離打者として活躍。高い打撃力を見せつけ、すぐにクリーンアップに座った。

 江藤さんは右打者だったが、アウトコースのスライダーを左中間に持っていくのが抜群にうまかった。右打者なら普通は逆らわずに右中間へ運ぶものだが、江藤さんはしっかりと踏み込んでヘッドを返して左中間へ飛ばした。あんな形になっているのによく引っ張れるなと思ったものだが、そこは江藤さんなりの技だったのだろう。あの打撃ができるのは江藤さんしかいなかった。

 プロ6年目まで全試合に出場し、その6年目の64年に首位打者を獲得。これで自信がついたのか、翌65年もタイトルを手にした。この2年はどちらも王(王貞治、巨人)が本塁打王と打点王の2冠だったから・・・

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