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裏方が見たジャイアンツ

香坂英典コラム 第74回 プロスカウトという仕事【4】

 

2018年の新人イヤー、イースタンでプレーするヤクルト村上宗隆。将来の三冠王も最初は二軍選手の一人だった


「準備」という言葉に集約


 前回はプロスカウトのキャンプ、オープン戦の仕事について話したが、今回はシーズン中の話に移ろう。

 当時の球団の経理部長などは「ウエスタン・リーグの試合はわざわざ福岡や広島まで行かなくても、大阪や名古屋の近い場所での試合を視察するようにしてください」と言っていた。経費削減の意味を含めて言ったのだろうが、そんな言葉のとおりにしていたら、僕らの仕事は成り立たない。僕らはチームを追いかけるのではなく、ターゲットの選手を追いかける。トレード対象や戦力外になる可能性がある選手を視察、獲得するため、チームの補強となる対象選手を追いかけるのである。ここが先乗りスコアラーとプロスカウトの違いだ。

 このようにちょっとズレているフロントの無知さや非協力的な実情はジャイアンツに限らず、他球団のプロスカウトたちから同様なことを聞いたことがある。当時、実際に「視察に行かなくてよい」という会社のお達しがあったチームもあり、そのチームのプロスカウトは「開店休業」になってしまった。

 そうなれば、われわれの仕事はこんな楽なものはない。失礼な言い方だが、当時、プロスカウトの行動範囲を制限していたあるチームは、このころBクラスが続いていた。年月は経ち、そのチームはプロスカウトの行動制限を撤廃し、どのチームより活発な動きで獲得リストにある選手たちを追いかけた。そしてトレードと戦力外選手からの再契約などで獲得した選手たちがところどころの一軍の試合で活躍して、そのチームの重要な一軍戦力のピースになった。そのチームの現在はどうか。Bクラスどころか常に優勝争いに加わるようになり、頂点をも極めるチームとなった。

 名古屋や大阪への遠征試合に連れて行ってもらえないウエスタン・リーグの選手は、本拠地で行われる試合ならば出場のチャンスはあるものだ。それを見に行かなくてはならないのが、われわれの大変なところでもある。

 育成選手もトレードできるの? とよく聞かれた。答えは「トレードできます」。ただ・・・

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