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香坂英典コラム 第42回 希代のクセ者・元木大介の真実?【中編】

 

文中のシーンではないが隠し球を狙い、未遂に終わったシーン


味方さえあざむく男


 1981年に就任された藤田元司監督時代のヘッドコーチ、牧野(牧野茂)さんは宮崎キャンプのミーティング中にナインに説いた。

「野球は詐欺的な要素を生かさなければ、相手を超えることはできない」

 詐欺? 言葉は悪いが、相手を欺(あざむ)くことも戦法の一つであり、良く言えば頭脳プレーである。ここで、中編にしてようやく、元木大介のクセ者たる所以とも言える出来事を紹介したい。

 まずは「隠し球」だ。えーと、相手チームはどこだったかなぁ、甲子園! そう阪神戦かな……。「チェ! あともう少しだったのに!」。サードの守りを終えて、三塁側ダッグアウトに戻って来た大介が悔しそうに言った。

「成功すれば新記録だったんやぁ!」

 何のこと? と尋ねると「隠し球やったんですよ。マキさん(槙原寛己)がボールを持っている振りしてたんですけど、我慢できなくなって『大介、早くボールよこせ……』って、グラブ差し出しちゃうんですよ……。ダメだよぉ、マキさん、記録だったんだから、もうちょっと知らん顔しててよぉー」。

 僕らは腹を抱えて笑った。それって記録かぁ? で、隠し球は今まで何回成功してるんだ? と言うと大介は「2個です。さっき成功してたら3個でプロ野球記録です」(笑)。「プ、プロ野球記録?」と言うと、大介はどのチームの誰という選手が大介と同じ隠し球2個を成功していて、もう一人、どこどこの誰がやはり2個で、数では並んでいるというようなことを説明し出した(大介、悪いがそこはちゃんと聞いてなかった)。

 熱っぽく説明する大介だが、僕はそんな隠し球の記録なんて残らないしと思い、申し訳ないが大介に背を向けて失笑していた。しかし、場所は怒涛の応援の甲子園、あの阪神ファンの目の前で「隠し球」をやろうとしたんだから、その度胸というのも見上げたものだが、コイツは面白い奴だなぁと笑ってしまい、本当に野球小僧なんだなとつくづく感心してしまう(笑)。

 大介は野球に夢中なのだ。アンパイアの「プレーボール」というコールが掛かると・・・

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