週刊ベースボールONLINE

裏方が見たジャイアンツ

香坂英典コラム 第43回 希代のクセ者・元木大介の真実?【後編】

 

現在は原辰徳監督[写真左]を支えるヘッド兼オフェンスチーフコーチだ


ファッションショー出演


 1994年は元木大介の4年目。打率、ホームラン、打点も年々数字はキャリアハイを更新していた。もっと試合に出たい、もっと目立ちたいと僕に対する大介の旺盛なアピールは日常茶飯事だった。

 勝利試合のお立ち台に乗るヒーローが決まらないと、大介は頭を悩めている僕に「お立ち台、決まらないんスか?」と聞いてくる。するとすかさず「俺、乗ってもいいですよ」とニコリ。何言ってんだ、オマエ試合に出てないじゃないかと言うと「せやね」と笑う。そしてヒーローがいないときには、そのたびに僕に「広報! オレ乗るよ」と言うので、「この忙しいときにウザい」と思うようになってしまった(笑)。

 これは僕と大介のお約束と言っていい会話だったが、実はお約束どころか元木大介という選手は「人に見られていないと力を発揮できない選手、注目されればされるほど気持ちが乗ってきて、結果に結びつけられる選手」ということを僕は少しずつ感じ始める。ベンチスタートが多くなると大介はスーパーサブには徹していたが、毎日が不完全燃焼であった。

 大介に元気を注入する出来事が起きる。ファッション誌「メンズクラブ」(ハースト婦人画報社)から、ファッションショー「メンクラ・フェスティバル」出演の依頼が飛び込んできた。メンクラの担当者の方は「野球選手にはもっともっとカッコよくあってほしい。野球選手のオシャレ感をもっとファンにアピールすべきです」と僕にいつも熱っぽく語っていた。

 僕だって、仕事上、野球の魅力、選手の魅力を多くの方々に知ってもらって、なおかつ野球を知らない方たちにも選手の魅力をアピールしなければならないと常々思っていた。「メンズクラブ」さんにはこれまでにも長嶋茂雄監督が一流ブランドのスーツに身を固めてのフォト撮影、インタビュー企画、上原浩治高橋由伸もスタジオへ足を運んで衣装選びから始まり、メンズクラブの表紙を飾ったことや12球団の各球団一人ずつの選手がスーツで身を固めてズラリと登場する企画をいただいたりした。そのときの巨人代表は高橋尚成で、纏(まと)ったブランドは「ポロ・ラルフローレン」だったかなと記憶している。

 そんなさまざまなお付き合いはあったものの、今度はファッションショー出演とは……。ただ、今はシーズン中であり、常識的に考えればシーズン中としてはなかなか実現しにくい案件だと思った。選手だって、やってはみたいけどシーズン中にファッションショーとなると「今は勘弁」となるに違いないし、僕も残念ながら「今は……」とお断りするしかないと考えていた。

 ただ・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

裏方が見たジャイアンツ

裏方が見たジャイアンツ

ジャイアンツ一筋41年。元巨人軍広報による回想録!

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング