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裏方が見たジャイアンツ

香坂英典コラム 第53回 長嶋監督から学んだこと(後編)

 

食べているときの長嶋監督はいつもいい顔をしている


ずっとカレーモード?


 長嶋茂雄監督編の3回目となる。なぜか監督の話は食べ物の話ばかりになってしまっているが、これもやはり食べ物の話……。

 長嶋監督は誰もがご存じの食通だ。しかし、広島遠征でのある日の出来事……、巨人担当記者から聞いた話だった。「監督は(広島風)お好み焼きを食べたことがないそうですよ。ということなので、今度われわれ報道陣と食べに行くことになったんです」。へぇー、僕も初耳だった。

 そして、再び広島遠征にやって来た3連戦の最終日のことだった。ナイトゲーム後、僕の部屋のドアをノックする音……、開けると小俣進さんが立っていた。「香坂、お好み焼き食べるか?」。いやいや、もう食事は済ませましたよ、と言うと小俣さんは「これ、監督が出前頼んだんだよ。お前らも食べるかぁってね。だからお前もこれ食べろよ」と手には3個のお好み焼きのパックを持っている。はあ、ありがとうございます、でも、どうして……、監督がお好み焼き……? 小俣さんは「今まで食べたことなかったらしいんだけど、記者と食べに行ってどうやら監督、ハマっちゃったらしいんだ」(笑)。

 えーっ? だって監督はグルメでいつもいい物ばかり食べてるんでしょ? と言いながら僕は笑ってしまう。小俣さんも笑いながら「ということだから、これから広島の3戦目の夜はお好み焼きだからな、お前もちゃんと腹をすかして部屋で待ってろよな」。まだ温かいお好み焼きを手渡され、バタンとドアが締まった。監督はB級グルメに目覚めたのかと思うと思わず失笑してしまった。そうか、やっぱり食べたかったんだ、お好み焼き……(笑)。

 B級グルメと言えば話はまだあった。カレー編だ。宮崎キャンプの練習中の昼食、当時われわれ一、二軍が長年お世話になっている青島グランドホテル、青島水光苑ホテルのキャンプの食事はおいしく、知る人ぞ知る味だ。

 それに報道関係者用食堂も同じく球場に隣接した建物に球団が設けている。あるキャンプの昼食時間帯、監督が何かソワソワしていた。「小俣、あっちのメニューは何だぁ〜?」。あっちというのは、球場三塁側にある二軍専用食堂もしくは報道関係者用食堂のことを言っている(一塁側は一軍専用食堂)。すると監督はすくっと立ち上がって、ジャンパーを羽織り、小俣さん、所(所憲佐)さんを従えて三塁側ダグアウトに向かって歩き出した。

 まずは二軍専用食堂に顔を出す。長嶋監督が突然現れ、二軍関係者、選手たちもビックリ、食事中の選手たちもその場で箸を置き、直立不動で挨拶(あいさつ)をする。そして、気もそぞろに報道関係者食堂に移動。ここでも普段は滅多に来ることがない長嶋監督が現れたため、食事中の報道関係者たちも騒然となって皆が次々に頭を下げる。

 ここで監督が「こんにちは〜、今日は何ですか〜」と報道関係者用食堂業務を請け負っている会社の社長「ゲンちゃん」に声を掛ける。「今日はカレーです、よろしければ、監督もどうぞお召し上がりください」。監督は・・・

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