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裏方が見たジャイアンツ

香坂英典コラム 第75回 プロスカウトという仕事【5】

 

プロスカウト時代の筆者の直属の上司だった清武元球団代表


難しかった「日報」


 プロスカウト視察で他球団のキャンプ地などを訪れると、球団によっては編成部長やGMが直々にわれわれを迎えてくれ、控室に招かれ、温かいコーヒーがテーブルの上に出されたりする。勤勉な編成部長やGMたちは、その場でわれわれを質問攻めにする。こちらが何か聞き出したいと思っていても、逆に巨人のことをこまごまと聞きまくられる。

 そういうしかるべき人の話を聞いていると、実によく他球団の情報を集めていることがうかがえる。負けじと僕も相手チームの情報を探るために聞きまくるが、収穫ありとなるときとならないときがあり、なかなかの難しさを感じたりしていた。

 まるで新聞記者のようだなぁと今振り返るが、そう、まさに調査と言うより、やっていることは取材活動だった。当時の球団代表であり、編成本部長の僕の直属の上司である清武英利さんからの指示、命令、注文は一筋縄ではいかなかった。直接トレードに関係のない事柄についても随時報告することを義務付けられた。

 同じプロスカウトの木樽正明さん以下、僕らに課された「日報」はありきたりの事柄を報告したのではダメで、いわゆる「特筆すべき内容」、もしくは「特ネタ」的な内容を期待していたようで、清武さん自身がもっと興味深いと思うものが欲しかったようだった。そして記載量も少なく、簡単なもので終わると「これだけか……、これで終わりか……」という返信が来た。

 書くのはいい、しかしネタなんてそうあるものではなかった。新聞記者のような切り口で物事を捉えようとする自分がいつの日か「トレードをするために行う調査活動」というプロスカウトの本分から外れていくような気がしてならなかった。

 僕らの仕事は選手の個々の評価票(スカウティング・レポート)を作ることがメーンだと思っていた。分かりやすく言えば「選手の通信簿」とでも言うのだろうか。特にマークすべき選手をトレードのリストに入れて、一人ひとりを評価票にする。

 評価票の雛型(ひながた)は、僕がプロスカウトになったころはシンプルなものだった。投手ならば・・・

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