広島からトレードの打診
僕がプロスカウトをしていた通算12年の間に行われたトレードは、数えてみると回数にして20回ほどあった。トレードの交渉は基本的に両球団の責任者同士で行われるものだが、その形がすべてということではない。場合によっては責任者同士ではなく、
朝井秀樹のケース(2010年7月26日に
栂野雅史との1対1のトレードで
楽天から
巨人へ移籍)のように、プロスカウト同士が窓口になって話が進むこともある。また、プロスカウトとGMだったりすることも。それらはすべて編成部門の責任者の指示があってのことだ。
それぞれのトレードが合意するまでの経緯はさまざまだった。13年4月28日に合意した巨人・
小野淳平と広島・
青木高広の1対1のトレードは思いも寄らないきっかけからトレード成立に発展したケースだ。
巨人対広島戦で両球団のチーム付きスコアラーがいつものようにネット裏に陣取っていた。当時の広島チーフスコアラーが巨人チーフスコアラーに言った。
「先発できる若い投手が欲しいんです。小野淳平が欲しいのですが……」
この話が当時の原沢敦代表を経由して、僕の耳に入ってきた。プロスカウト6年目を迎えていたそのシーズン、プロスカウトは僕一人の体制であった。開幕からまだ1カ月を過ぎたばかりの、この時期にトレードが行われるということはあまり例がない。それもセ・リーグ同士がトレードするとなると、当面の敵チームの手の内を探られるというリスクさえあるからだ。
トップシークレットである、戦う上での守備や攻撃のサインなどもすべて変えなければならない。だから、シーズン中のトレードは同リーグ同士ではないほうが好ましいという考えもある。でも、広島は若くて力のある先発投手の存在を熱望していた。当時の
野村謙二郎監督のたってのオファーだということを原沢代表から聞かされる。
僕は原沢代表に尋ねた。
「交換要員としては、どこのポジションになりますか?」
原沢さんは・・・
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