週刊ベースボールONLINE

裏方が見たジャイアンツ

香坂英典コラム 第80回 プロスカウトという仕事【10】

 

ソフトバンクで2009年に11勝をマークしていたホールトン


3年前からFA選手を調査


 初歩的なことだが、僕たちプロスカウトは日ごろの調査を基に相手チームのチーム編成状態を把握するため、ポジション別、または打線別に分類した一覧表を作成し、各チームの「チームバランス」を見ている。投手陣で言えば右投手、左投手に分けて、先発、中継ぎ、抑え、野手陣ではクリーンアップ、チャンスメーカー、ポイントゲッター、代走要員、守備要員など監督の采配のコマとなる選手がしっかりと構成されているかなどを見れば、そのチームの補強すべきポイントが大方見えてくる。

 だから、各チームのプロスカウトは必ずオリジナルの「トレードメモ」や「トレードリスト」を持っていて、常に状況の変化もチェックする。その中でジャイアンツの補強ポイントに合う選手を考えるのだが、僕らは味方のジャイアンツの選手の力量や伸びしろもチェックしておかなければならなかった。他球団選手と比べるからだ。「敵を知る前に、己を知れ」だった。だから11チームの他球団だけではなく、やはり自チームを含めた12球団すべてを見て、把握しておかなくてはならなかった。

 トレードはチームを編成する上での一つの方法だ。そもそも、それは[1]新人選択会議(ドラフト指名からの契約)[2]新外国人選手(国内、国外)契約[3]フリーエージェント(FA)契約[4]育成選手契約、そして譲渡契約(トレード)になる。僕はトレード担当ではあったが、そのシーズンによっては編成本部の責任者(代表、編成本部長、あるいはGM)から調査対象者が誰なのか指令を受ける。国内でプレーする他球団の外国人選手を新しい契約で獲得するための調査、のちのちFAの権利獲得をするであろう選手の調査も同時に行った。

 特にFA見込み選手に関しては3シーズンも前のキャンプからチェック開始を命じられたことがあった。そのときは、その対象選手を視察するだけでなく、写真を撮ることも義務付けられた。これは当時の清武英利球団代表の指示によるものであった。清武代表は「FA交渉のときには写真やリポートを選手に見せる。だから、写真も撮ってくるように。『3年も前から、FA取得に合わせて君を追いかけてきたんだ』という言葉と一緒に巨人軍の誠意の表れの一つとして交渉で活用したい。そのための君の調査リポートだ。しっかりとやってくれ」と僕に言った。

 僕のプロスカウトの仕事は本当に忙しかったが、この指示を受けたときは、清武代表の執念と情熱を感じたものだった。でも、編成本部のトップが交代すると、今度は「今年は外国人を見なくていい」、あるいは「今年はFA選手を見なくていい」などと突然、業務指示が変わり、シーズンによってマチマチな指示を受けることがあったのはかなり戸惑った。その指示のばらつきが・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

裏方が見たジャイアンツ

裏方が見たジャイアンツ

ジャイアンツ一筋41年。元巨人軍広報による回想録!

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング