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裏方が見たジャイアンツ

香坂英典コラム 第86回 阪神タイガース・岡田彰布新監督応援歌【1】

 

2022年秋のドラフトで浅野翔吾を懸けて原監督[左]、岡田監督が“対決”。クジ引きの末、原監督に軍配が上がった


ドラフトで伝統の一戦!?


 2022年10月、阪神タイガースOBで野球評論家である岡田彰布氏が23年度の阪神タイガース監督に就任した。岡田氏は12球団の最年長監督として指揮を執ることになった。岡田監督は1957年生まれの65歳、僕と同い年だ。大学2年生時からオープン戦、大学選手権決勝戦でも対戦し、79年に日米大学野球大会の全日本チームにともに選抜され、のちにお互いプロ野球の世界に身を置いても友人として現在に至っている。

 その岡田の姿をテレビで久しぶりに目にした。22年10月20日、プロ野球ドラフト会議だった。ドラフト会議はその歴史の中で多くの物語を生み、「人の人生を変える」ドラマがあった。僕も2020年をもって、ジャイアンツを退団し、プロ野球の世界から離れたとは言っても、その興味深いワクワクした気持ちを抑え切れず、テレビに映るドラフト会場での各球団のせめぎ合いをじっと見ていた。会場中央の壇上に立つスーツ姿の岡田監督の隣に立つのは、巨人軍監督である原辰徳氏だった。そう、来季の阪神、巨人伝統の一戦の序章と言ってもいい、ドラフト1位、高松商高の外野手、浅野翔吾君の交渉権獲得のクジ対決だ。岡田監督、原監督のそれぞれの引き当てる確率は50パーセント。そして……、原監督が当たりクジを引き、浅野君の交渉権を獲得した。

 僕の友人で学校は違うが、一つ年下の後輩の新宮龍二は浅野君の母校、高松商高出身で早大を経て、社会人のいすゞ自動車でプレーするなど名門野球部を渡り歩いてきた男だ。現在、高松市内在住の新宮は以前から「香坂さん、浅野というすごい高校生がいるんですよ。ジャイアンツのスカウトが本当によく見に来てくれて、もう地元は浅野は巨人に行くという雰囲気であふれています」と、もう巨人に行くと決めつけているような、絶大な期待を込めて僕に言った。

 新宮が言うまでもなく、浅野君はすでにドラフト候補として当然僕の知るところのものであったが、命運は「クジ」によって決まる。どこでどんなことが作用して「人の人生」が変わってしまうか、こればかりは誰にも分からない。だが、「あとは彼の運の強さに任せるしかないでしょう」と言った新宮の言葉どおり、浅野君は自分の運を引き寄せたのだろう、満面の笑みで1位指名をかみ締め、笑った。

 ただ、このドラフト会議・・・

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