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香坂英典コラム 第88回 阪神タイガース・岡田彰布新監督応援歌【3】

 

阪神現役時代の岡田監督。筆者とも何度か対戦がある


記憶に残る岡田との対戦


 前回は話が大きく逸れてしまったが、大学時代に僕を上から見下ろしていたであろう早稲田の岡田彰布には1979年秋のドラフト会議で西武ライオンズ、ヤクルトスワローズ、南海ホークス、阪神タイガース、阪急ブレーブス、近鉄バファローズと6球団の1位指名が重複する。それでもクジ引きの末、岡田の意中の球団である阪神が交渉権を獲得、そして入団、岡田の運命は王道を辿る。

 ただ、読者の皆さんはプロの世界での実績が皆無に近い僕と岡田のその後の対戦などは気になるものだろうか。わずかであるが対戦はあったので、その「わずか」を紹介させてもらう。

 えー、さて……、何打席だったかな……。オープン戦、公式戦ともに数打席だったと思う。あまりよく覚えていないが、うっすらと覚えているのは82年の4月末、甲子園球場での伝統の一戦だ。その日は試合開始から降り出した雨でコンディションはすこぶる悪かった。6回から僕はマウンドに上がったが、この回、3回途中からリリーフしていた鹿取義隆さんが2本の2ランとソロで5失点。僕は0対11と大量リードされている場面での登板だった。

 降りしきる雨がさらに激しくなっており、グラブの中のボールを濡れないようにするだけで神経を使った。今思えばいつ中断をしてもおかしくない雨、まるで石鹸で手を洗ったときのように指先はヌルヌルと滑り、思い切り腕を振ればボールがすっぽ抜けてとんでもないところへ行ってしまうのではないかという不安にも駆られたほどだった。

 到底、三者凡退には相手を抑え切れず、常に走者を背にしながら、何とか6回、7回と0点に抑えたが、その中で岡田との対戦があった。依然としてやまない雨は岡田のヘルメットにしぶきを上げて降り注いだ。打席に近付いてきた岡田の顔をマウンドから見るが、この雨……、表情がよく見えない。

 そして、岡田が打席に近付き、僕のほうをチラリと見た。エッ? 笑っていた……。岡田は笑みを浮かべていた。なぜ笑っていたのか……、余裕ともとれるその表情は何を思っていたのか。まさに上から目線、僕を敵ではないと思ったのか……。はたまた大学時代と同様、どっちにホームランを打とうかとでも思っていたのか(笑)。正直言って、そのときは、そんな多くのことを考えている場合ではなかった。

 悪いボールではなかったと記憶しているが・・・

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