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裏方が見たジャイアンツ

香坂英典コラム 第95回 プロ野球の写真記者と巨人広報の話【2】

 

97年の春季宮崎キャンプで移籍1年目の清原にノックを浴びせる長嶋監督。その様子をカメラマンが狙うが……


新聞的には不要な写真


 グラウンドで写真撮影を行うカメラマンたちも何とももどかしい経験をするこんなことがあった。1997年の春季宮崎キャンプで、宮崎ひむかスタジアムに隣接するサブグラウンドではこの年、フリーエージェントで移籍してきた清原和博が内野の特守(トクシュ=特別守備練習)をするために一人でその準備をしていた。その年の清原は当然、注目の時の人、清原一人がサブグラウンドに到着しただけで、ファンがドッと移動し、あっという間にその周辺は多くの人だかりになった。

 清原の特守が始まる。ノックの数が重なり、泥と汗にまみれた清原がグラウンドに何度も倒れ込んだ。この瞬間をカメラに収めようと写真記者、そしてテレビカメラマンたちがカメラを向ける。そこへ長嶋茂雄監督の乗る白い監督車が到着、清原の特守を見にやって来た。カメラマンたちにとっては長嶋監督、清原のツーショットのチャンスだ。威勢のいい甲高い長嶋監督の掛け声が何度もグラウンドに大きく響く。

「清原! まだまだー!」

 そのとき、グラウンドの入口から大きなストライド、ガニ股で両腕を左右に振りながら入ってくる巨人OBがいた。400勝投手の金田さん(金田正一)だった。金田さんは泥だらけの清原に向けて、長嶋監督同様、大きな声を掛ける。そのとき、撮影を続けていたカメラマンたちが口々につぶやいた。多くのテレビクルーも同じだった。

「勘弁してくれよー……」

 彼らは長嶋監督と清原だけのショットが欲しかった。しかし、金田さんは気合が入っていた。腕組みをし、「ヨッシャー! ナイスキャッチ! いいぞ!」。ただ、長嶋監督と清原の間に金田さんが映り込んだスリーショットは金田さんには失礼だが、新聞的には不要な写真になってしまい、原稿としては使えない。金田さんはたしか週刊ポストの仕事でよくキャンプに来られていたことが多かったので小学館のカメラマンが来て写真を撮ったのならば、それは金田さんのコラムなどでは使えば最高の写真になる。だが、突然の金田さんの乱入、これにはその場にいた数十人の撮影メディアは一旦カメラを地面に置いてしまった。

 小俣進監督付広報に僕は言った。

「困りましたね、これじゃ写真も映像も使えないですね」

 ただ、金田さんは悪気があるわけでもなく・・・

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