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裏方が見たジャイアンツ

香坂英典コラム 第96回 全府中野球倶楽部【1】

 

オーストラリア戦の集合写真


願ってもない出来事


 2023年2月25日、僕は東京、府中市にある府中市民球場にいた。何をしに、ここへ来たのかって……? それは野球の試合をするためだ(笑)。それも、その試合というのは23年WBCオーストラリア(豪州)代表チーム対全府中野球倶楽部(全府中)の親善試合だ。実は僕は2年前に読売巨人軍を定年退職後、縁あって、日本野球連盟に加盟する社会人野球のクラブチームである全府中にコーチとして所属していたからだ。そんなご縁をいただいて、なんと36年ぶりにユニフォームを着ることになり今年で2シーズン目を迎えようとしている。

 今シーズンスタートを控えていたオフシーズンのころに、僕ら全府中にビッグニュースが飛び込んできた。全府中のコーチ兼マネジャーの前田(前田勉)さんから逐次、送られてくる連絡の中に「2月25日、WBCオーストラリアナショナルチームとの親善試合」という文字が。えっ? WBC? オーストラリアとやれるの? 驚いた……。予定では、われわれ全府中のほかに栃木県足利市にある「全足利クラブ」、東京都に本拠地を置く社会人企業チームである「JPアセット証券」の計3試合の親善試合が組まれていた。

 2月9日、府中市は豪州野球連盟と友好関係の相互協力を進める覚書を締結し、WBC本大会に向けて豪州は府中市内で事前キャンプを張ることとなり、親善試合のほかに選手たちは公開練習を行ったり、少年野球教室、地元小学校への訪問など、市民との交流の場も設けられた。僕ら全府中は日ごろから多くの市民の皆さんや支援者の方々から応援をいただいていることもあり、こうして皆さんから注目される大きなチャンスをもらえたことは選手たちにとっては喜ばしく、日ごろから培った力を試す場にもなり、ワクワク感を持って試合に臨めることは何よりも楽しく感じていた。

 この願ってもない出来事にナインは皆、興奮し、僕自身もこの試合で一人でも多くの選手が何らかの収穫を得られればという期待も高めていた。そしていよいよ、その日はやって来た。日曜日の府中市民球場は午前中から日差しは差し込むものの、天気予報どおりの気温1ケタ台の数字で、残念ながら「野球日和」にはほど遠い、プレーヤーにとってはなかなか厳しい環境となった。

全足利クラブはサヨナラ勝ち


 ダブルヘッダーの第1試合、豪州初戦の相手となる全足利クラブは全国を勝ち抜いたクラブチームが集結するクラブチーム選手権で一昨年は優勝、昨年は準優勝という成績を収めるクラブチームの雄であり、投打のバランスが取れたとてもまとまりのある良いチームだ。わが全府中も昨年、オープン戦で2度対戦しているが、0対2、2対4と退けられている。

 全足利クラブは、3回に豪州の捕手・パーキンスの左越え場外ソロ弾、4回には二塁手で左打者のボーウィに右中間に2ランと2本のホームランで3点を奪われる。全足利クラブのバッテリーの配球を見ると、ストレートを狙われないようにする工夫が所々に感じられ、その慎重な攻めの徹底ぶりには感心させられる。2本のホームランを打たれたと言っても、それは責められるものではなく、できることはやったと言える内容。だが、豪州選手の名刺代わりの一発と言わんばかりのパワーある打撃は府中市民球場を狭く感じさせるものだった。

 それにしても豪州はまだまだ調整段階であり、またこのときの気温6度という寒さが影響したのか・・・

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