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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「“イーハトーブ”が育んだ2人のメジャー・リーガー」

 

花巻東高時代の菊池。メジャーで母校の後輩・大谷と好勝負を演じている


 花巻東高の選手がかぶっているすみれ色の帽子を思い浮かべることができるだろうか。そこについているのは、流れ星が引く光の尾の如く流線型のラインで彩られた筆記体のHのマークだ。そこに込められた意味について菊池雄星がこう話していたことがある。

「あの帽子、カッコいいんですよ。マークは(花巻東高の佐々木洋)監督が作ったんです。まず漢字の“人”を書いて、カタカナの“ノ”を書いてHを描く。そこに“輪っか”を書き加えて、つまり“人、ノ、輪”で花巻東なんです。監督のセンス、感じますよね」

 チームの同級生たちでつなぐ横の糸が“和”なら、先輩から後輩へとつないでいく縦の糸が“輪”なのだろうか。実際、佐々木監督のたくさんの教え子たちが何年にも渡ってつないでいるであろういろんな輪の中で、例えば“メジャーの輪”は菊池から大谷翔平へと確かにつながっている。

 花巻といえば『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』などの名作を世に送り出した詩人であり童話作家でもある宮沢賢治の故郷、“イーハトーブ”の里である。イーハトーブとは宮沢賢治の作品に登場する心象世界の中の理想郷で、そのモチーフは岩手ではないかと言われてきた。“イーハトーブ”が育んだ2人のメジャー・リーガー──花巻東高のグラウンドに立つといつも不思議な気持ちに包まれる。いったいなぜ、ここから立て続けに「メジャーへ行きたい」と公言するドラフト1位の高校生が出てきたのか。それは偶然だけがもたらしたわけではない。

 大谷が花巻東高に入学したのは・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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