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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「“白虎隊”の心を持つフロントマン」

 

日本ハムに育成方針があったからこそ、大谷翔平は大きく育った[写真はプロ1年目の2013年]


 白新高の山井英司という三塁手のことをご存じだろうか。小柄ながらガッツ溢(あふ)れるプレーでサードを守ることにこだわり続けた山井は高校時代、一度も公式戦に出場していない。新入部員の中に同じサードの国立玉一郎がいたからだ。そう、のちに東京メッツで四番サードを任される、あの国立である。チョウが舞いハチが刺す優美なプレーに加えて歌舞伎役者の長男という異色のプロフィール、さらにはスター性十分のイケメンという高校球界きってのスーパースターが同学年にいたとあっては、山井がレギュラーを勝ち取る可能性はゼロに等しかった。

 山井はレギュラーの練習が終わったあと、陽(ひ)が沈むまでのわずかな時間を惜しんで練習に励んだ。夜になれば、貧しい家を女手一つで支える母の手伝いで屋台を引き、その合間にネオンの光を頼ってカベ当てをした。それでも山井は国立を超えることができず、3年間を白虎隊として過ごすことになる。白新高における“白虎隊”とは、上から下まで白一色のユニフォーム、胸のマークも背番号も着けることを許されない補欠の選手たちのことを指していた。

 卒業を控え、国立は東京メッツにドラフト1位で指名される。そして山井もまた、公式戦出場がなかったにもかかわらず、阪神タイガースから5位で指名された。しかし山井は高校3年間で燃え尽きたと入団を拒否。のちに、東京日日スポーツの記者として国立のいるメッツを担当することになる。

 ……長々と野球マンガの話を書き連ねてきたが、半世紀を生きた野球好きなら・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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