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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「記録と人柄を結びつける危うさ」

 

薬物“疑惑”がボンズの殿堂入りを阻んだか


 あれは就活のときのことだ。

 とあるテレビ局の面接で影響を受けた作品について聞かれた。そのとき、ある芸人の文芸作品を挙げたら、面接官にこう言われた。

「その芸人はついこの前、事件を起こして警察に逮捕された人じゃないか。そんな人の作品に影響を受けたなんて、いったいキミは何を考えているんだね」

 血気盛んな当時、一瞬、面接という場を忘れてこう言い返した。

「その問題は、作品の善し悪しとは別だと思います」

 すると面接官は激怒した。

「その作品を書いた人物が問題だと言っているんだ。マスコミを志望する学生が、尊敬すべきでない人物の作品に影響を受けたと面接で言える姿勢はおかしいだろう」

 こちらも止まらなくなった。

「逮捕されたからと言って尊敬すべきでないと言い切るのもどうかと思います。僕は仮に自分の親が逮捕されたとしても、尊敬する気持ちに変わりはない。人伝(ひとづて)に見聞きした人柄と作品は切り離して考えるべきじゃないでしょうか」

 もちろん次の面接へ進む電話はかかってこなかった(苦笑)――そんな昔話を思い出したのは、バリー・ボンズとロジャー・クレメンスのことが報じられたからだ。全米野球記者協会(BBWAA)による今年のアメリカ野球殿堂入りの投票結果が発表され、メジャー記録となる762本のホームランを放ったボンズ、メジャー最多となる7度のサイ・ヤング賞を受賞しているクレメンスが今年も規定得票率の75%に届かず、落選した。ともに候補としては今年が最後となる10年目。これによりボンズとクレメンスは・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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