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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「長所を見て短所は見て見ぬふり」

 

清宮は才能を開花させることができるか


 蒸し暑い、大阪の夜──。

 久しぶりに会ったのは旧知の球団関係者だ。初めて出会ってから30年以上になる。最近は彼のほうが野球関連の仕事を離れているため、すっかりご無沙汰していた。その彼が昔話を始めた。近鉄バファローズ、オリックス・ブルーウェーブ、さらにはオリックス・バファローズで監督を務めた仰木彬のことだ。彼は仰木にこう言われたことがあるのだという。

「短所を見て、ああ、この選手は使えんなんて考えておったら、ウチのチーム(当時のブルーウェーブ)はイチローだけになってしまうぞ(笑)。短所を見て選手を弾いてしまうのは簡単なことや。シゲ(長嶋茂雄)のように、短所が気にいらんからと言って弾いてもいい選手が残るチームはそれでええよ。でも、それではウチには選手が残らん。だからこそ長所を見て、短所のほうは見て見ぬふりをする。長所を生かすために、いかに短所を我慢できるか……それが監督の仕事やと思うんや」

 長所を見て、短所は見て見ぬふりをする……そう言われて真っ先に思い浮かぶのは村上宗隆だろう。史上初の5打席連続ホームランを放ったNPB屈指のスラッガーは、今年、高卒5年目。高校3年間で52本のホームランを放った村上は、外れ1位の3球団競合を経てスワローズに入団。1年目にはファームで四番を打ち、結果を残す。

 それでも一軍昇格は9月、初回にエラーを記録するとともに初打席で初ホームランを記録した。1年目の一軍でのヒットはこのホームランのみ。それでも2年目は開幕スタメンに名を連ね、その後もエラーと三振を積み重ねながら試合に出続けた。結果、打率はリーグ最低の.231ながらホームランは36本。エラーはファーストで5個、サードで10個の計15個、三振はセ・リーグ記録となる184個。村上は新人王を獲得したものの、スワローズは最下位に沈む。

 プロ3年目も村上は全試合に四番で出場。打率は.307、ホームラン28本と堂々たる数字をたたき出し・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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