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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「17年前と変わらない野望を抱く決戦前夜」

 

17年前のイチローの役割は今年、ダルビッシュ有[中央]が担い、侍ジャパンの結束を強めている[写真=毛受亮介]


 前回に続いて、今回も時計の針を17年前に戻してみよう。拙著『屈辱と歓喜と真実と』より、第1回WBCの最中に行われた決起集会の場面を再現してみる。

 2006年3月13日。

 王貞治監督のもと、初めて行われたWBCに出場していた日本代表は、第1ラウンドを韓国に次ぐ2位で勝ち上がり、アメリカのアナハイムで第2ラウンドを戦っていた。その前夜、あまりに不可解な“世紀の大誤審”で勝ち越し機を逸し、アメリカにサヨナラ負けを喫した日本。皮肉にも愛国心に火がつき、盛り上がりを欠いていた日本でのWBCへの関心が急激に高まっているらしい──そんな噂は選手たちの耳にも届いていた。

 試合のなかったこの夜、イチローは野手全員を食事に誘っていた。選手たちはウエストロサンゼルスの焼肉店へと向かう。イチローはこの日のことをずいぶん前から考えていた。スケジュールを見ると、全員で食事に行けそうな日はこの日しかなかったのだ。家族が来ていた谷繁元信、アメリカ戦でのデッドボールが後を引いて治療をしていた松中信彦をのぞく野手がイチローの呼びかけに応えて、この日の集まりに参加した。

 イチローにとっては馴染(なじ)みの店。それほど広くない店内は、選手たちで貸し切り状態だった。縦長に並べられたテーブルの端にイチローが座る。すかさず宮本慎也川崎宗則に声をかけた・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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