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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「時代が移り変わっても変わらぬ“物語を残す意義”」

 

筆者が初めて購読した1974年5月13日号の小誌。手元に残り続ける物語に込める想いは“速報”とは異なる意義がある


 初めて買った週刊ベースボールは、今から49年前の1974年5月13日号だった。特集は『巨人V10ストップへ! 阪神の条件はすべて揃った?』、『バツグンの一塁守備みせるホームランモンスター・王貞治』とタイトルのついたグラビアには王がファーストゴロをアクロバットな動きで捕るカッコいい写真が掲載されている。

 表紙は大洋ホエールズのゴールデンルーキー、山下大輔――ネクストバッターズサークルでバットを持ってしゃがんだまま目線をもらうという、その昔、野球カードなどでよく使われた写真が使われている。山下が身に纏(まと)うのはオレンジとグリーンのユニフォームだ。当時、静岡出身の山下が入団したことを機に、静岡特産のお茶とミカンの色をモチーフに一新されたという“伝説の”ユニフォーム……いかに山下が『慶應のプリンス』で『大洋のゴールデンボーイ』と呼ばれていたとしても、ルーキーの入団がチームのユニフォームを変えさせたなどという話は後にも先にも聞いたことがない。

 四半世紀も前の週刊ベースボール、定価は150円。時は1974年、この年、ジャイアンツのV10がドラゴンズによって阻まれ、長嶋茂雄が現役を引退した。セ・リーグは群雄割拠の時代に突入し、1975年以降、カープ、スワローズ、ドラゴンズ、タイガースと、ジャイアンツ以外の球団が次々と優勝を果たすことになる。

 以降、なけなしの小遣いをはたいて週刊ベースボールを買い続けた小学生は・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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