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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「数字では計り知れぬもの チームづくりの優先順位」

 

チームスポーツの醍醐味──。昨年のWBCで侍ジャパンが勝ち取った世界一は、決して試合に出た選手のみでつかんだ栄冠ではない[写真=高原由佳]


何度も肩をつくった“7人以外”の右腕


 正月の箱根駅伝は毎年、楽しみで仕方がない一大イベントだ。もちろん母校の青学大が強いこともあるが、こちとらベースボールライター、駅伝は仕事抜きで満喫できるというところも大きい。今年も青学大の完全優勝に歓喜した。この10年の結果を眺めると、箱根で7度も優勝していること以上に、2年続けて負けていないというところに大いなる価値を感じる。

 勝つことは難しい、勝ち続けることはもっと難しい、一度負けてすぐに勝つのはさらに難しい──そんな言葉を、ファイターズのチーフ・ベースボール・オフィサーに就任した栗山英樹から聞いたことがある。青学大の原晋監督は負けた翌年、必ずチームを勝ちに導いてきた。3位となった昨年の箱根で優勝した駒大が、新たなシーズン、出雲と全日本で優勝。その間、青学大は出雲が5位、全日本で2位というだけでなく、その間のすべての区間で駒大の後塵を拝する完敗を喫していた。それが今年の箱根では3区でトップに立ち、そのまま7人が先頭で走り切った。たった1年勝っていないだけで“強い青山”を懐かしく感じるほど、箱根の青学大は勝って当たり前と思われている。

 今年の箱根での青学大は10人いた4年生のうち、16人の登録メンバーに入ったのは5人、1区から走った10人に入ったのが3人だった。主将の志貴勇斗選手は登録メンバーからも外れている。しかし、報じられている記事を読むと、メンバー外の4年生がチームを支えたというエピソードがいくつも紹介されていた。勝ったから説得力が増すというところもあるのだろうが、試合に出た選手だけで戦っているわけではないところが、とくにチームスポーツでは興味深く映るところだ。

 たとえば、昨年のWBCでも、決勝で投げた7人以外、ブルペンで何度も肩をつくっていた宇田川優希の存在が大きかった。宇田川が託されたのは主に先発と第2先発をつなぐ役割。初回から・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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