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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「90年目に色褪せぬもの。近未来の野球に想いを馳せ」

 

44年前と音域、声量ともほとんど衰えていないように聞こえたビリー・ジョエルの歌声。色褪せずに受け継がれていくために、野球界で可能性を唯一、紡いでくれる存在は確かだ[写真=Getty Images]


今なおアルバムに残る個性が際立つチケット


 子どものころからチケットの半券を大切に取っておくタイプだった。入場するときに右の端を切り取り線から切り取られ、半券が残る。今はコンビニで発券すると、どのチケットも同じような味気ないデザインなので取っておく気も失せる(それでも取ってある)のだが、その昔、チケット(というより入場券)はカラフルだったりチープだったり、とにかく個性が際立っていた。だからアルバムにチケットを貼って取っておいた。

 そのアルバムをめくってみる。もっとも古いチケットは1974年2月24日、静岡草薙球場でのセ・リーグのオープン戦、大洋対中日、中央席、700円のグレーのチケットだ。これ、小学校3年生のとき、人生で初めて観戦したプロ野球の試合のチケットである。公式戦だと74年5月16日、草薙球場の大洋対阪神の中央席、1200円のチケットはオレンジ色。7月17日、草薙球場のロッテ対阪急、内野特別自由席の招待券はショッキングピンクのど派手なチケットである。

 野球以外にも、1970年代後半のアリスや松田聖子、TOTOやロッド・スチュワートのコンサートのチケットも取ってあった。そんな中に、このチケットがある。80年4月22日水曜日、愛知県体育館。グリーンの半券で、値段の記載がない。座席は1階スタンド、Eブロック、107番。観たのはビリー・ジョエルのコンサートだった。

 彼が歌うニューヨークの街は名古屋の中学生にとってはあまりに現実味のない別世界だった。それでも『Honesty』や『ピアノマン』を夢中になって聴いた。ビリー・ジョエルが名古屋に来ると聞いて・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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