週刊ベースボールONLINE

石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「球場の原風景──思い浮かぶ数々の記憶」

 

球場の空気や光が街へ洩れ、最寄り駅に着くだけでドキドキする高揚感。胸躍る空気こそ球場の原風景だ[写真は後楽園球場]


醸し出す威圧感とドキドキする高揚感


 球場の原風景とは何だろう。昭和のプロ野球に想いが深い世代としては、球場と聞いて思い浮かんでくる記憶はいくつもある。

 大洋対中日のオープン戦で、人生初のナマ観戦を体験した静岡の草薙球場では試合前、球場の周りを歩く大洋の選手にサインをもらうために走り回った。小学生にしてみれば高価な色紙には寄せ書きをしてもらうのが当たり前。ひとりでも多くの選手にサインをしてもらいたいからだ。ところがある選手に新品の色紙を差し出し、「寄せ書きでお願いし……」と言いかけたときにサラサラッとでっかくサインを書いていただけてしまったときには、喜びより絶望が子ども心を支配したものだった(苦笑)。

 巨人ファンにとっての聖地、後楽園球場で思い出すのは、水道橋の駅まで洩れてくる光だ。巨人の試合があるのにチケットを持っているわけでもない夜、総武線に乗ると水道橋駅の車窓から光が見える。東京の夜空が後楽園球場のカクテルライトに照らされて白んでいる……あの光の下にあこがれの選手たちいるのかと思うだけで胸が踊った。初めてチケットを手に水道橋駅で下車した日、後楽園球場に辿り着いたら、そこは・・・

この続きはプレミアムサービス
登録でご覧になれます。

まずは体験!登録後7日間無料

登録すると、2万本以上のすべての特集・インタビュー・コラムが読み放題となります。

石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

関連情報

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング