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石田雄太の閃球眼

石田雄太コラム「観戦に残される可能性はグラウンドに転がる“音”」

 

昨年3月のWBC、イタリアとの準々決勝で力投する大谷翔平。リリース時の声が東京ドームに響き渡った[写真=Getty Images]


響き渡る選手の声と局面にあった応援


 正直に告白すると、35年前まで、ライトスタンドで応援メガホンを潰れるまでたたき、選手の応援歌を熱唱していた――そういう過去を持つ者として、鳴り物入りの応援をやめようなどと言うつもりはない。しかし昨年、WBCの準々決勝(東京ドーム)でスタンドに集った多くの野球好きは、鳴り物のない応援も悪くないと思ったはずだ。

 WBCの準々決勝、イタリア戦で先発した大谷翔平は一球一球、声を出しながら投げていた。

「フンッ」

「オリャアーッ」

「トォーッ」

 大谷が「独特の緊張感、特別なものがあった」と振り返った、負けたら次がない大事な一戦。ストレートは164キロ、スプリットは148キロをたたき出した気魄(きはく)のピッチングを、唸るボールに加えて1球ごとに発せられる大谷の声がさらに彩る。シーンと静まりかえった東京ドームに響き渡る大谷の声は衝撃的だった。バットが空を切ると、どよめきののち地鳴りのような大歓声が沸き起こっている。ベンチでその声を聞いていた厚澤和幸コーチがこう言っていた。

「僕はあの声は・・・

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石田雄太の閃球眼

石田雄太の閃球眼

ベースボールライター。1964年生まれ。名古屋市立菊里高等学校、青山学院大卒。NHKディレクターを経て独立。フリーランスの野球記者として綴った著書に『イチロー・インタビューズ激闘の軌跡2000-2019』『大谷翔平 野球翔年』『平成野球30年の30人』などがある。

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