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今に燃える球人魂

ソフトバンク・杉山一樹インタビュー 人生を『丁寧に生きる』「不安もない。自信もない。打たれたらもう1回、マイナスを削ってゼロに戻るだけ」

 

頂点を目指して――。2024年シーズンも連日、熱い戦いが繰り広げられている。勝負の世界で全身全霊を尽くし、魂をかけて今を生きる男たちの声を聞く新連載がスタート。第1回はゼロから自分を見つめ直して、一軍の舞台に帰ってきた鷹の剛腕が登場。明らかに過去5年間とは違う右腕の姿が、ここにある。
取材・構成=菅原梨恵 写真=川口洋邦、湯浅芳昭

首脳陣も一目置く変貌ぶり。開幕から登板を重ね、4月28日現在、失点を喫したのはわずか1試合にとどまっている


6年間の集大成


 別人かと思うほど、今年の背番号40は頼もしさにあふれている。制球難を露呈していたころの杉山一樹はもういない。堂々とマウンドに上がり、1球1球、力を込めて打者を封じていく。右腕にどんな変化があったのか――。その理由に迫ろうとインタビューを敢行すると、いつもの飾らない右腕と時折出る“杉山節”で、ありのままの思いを伝えてくれた。

――開幕して1カ月が経ちましたが、ここまでを振り返っていかがですか。

杉山 どんな感じか、ということですよね? どうだろうなー。

――自身の中で一つ、開幕一軍スタートというところは目標だったのでは?

杉山 いや、ないです。あまり意識はしていなかったですね。特に今季は。

――では、どういう思いでオフシーズンから過ごしてきたのでしょうか。

杉山 うーん、今年で終わる……終わるんだろうなという、そんな気持ちで。3年ぐらい前に僕自身が願い出て、先発をやらせてもらって。そこで結果が出なかった。昨年はケガが続いて、結構大きいケガだったこともあって、クビやろうなというのがよぎったんですよ。それまでももどかしい時間をずっと過ごしていたんで、最後くらい自分で納得して終わりたいなと。そんなふうにこのオフはずっと考えて、1イニング、自分の力を出し切ったほうが、僕のためじゃないけど、チームにとってもいいんじゃないかと思いました。それで春、倉野さん(倉野信次、投手コーチ[チーフ]兼ヘッドコーディネーター[投手])にお願いをして、「(中継ぎとして)覚悟を持ってやります」と伝えました。

――その覚悟を見ていてひしひしと感じます。今年の杉山投手はこれまでとは違うな、と。自身は客観的に見て、変化や違いを感じていますか。

杉山 僕の場合、自滅……フォアボール、フォアボールというのが課題でした。でも今は、すごく落ち着いて丁寧に投げるように自分でコントロールできています。昔の自分が出ないかと言われたら全然信じられないんですけど、そうならないように、ちゃんと準備はしている。その点は、自分の中で変わったなと思いますね。

――これまでも落ち着いて投げるという意識は持っていたと思いますが、今年に入ってうまくいっている要因は?

杉山 えー、何だろう。でも、これまでキャッチボールにしても、小手先でやるのが好きじゃなかったんですよね。目を背けていたというか、そういう取り組みをしてこなかった。でも、それこそラストだと思って腹をくくって。今までの自分の考えは捨てました。

――そうしないと終わってしまう、と。

杉山 一昨年の秋、和巳(現四軍監督の斉藤和巳)さんが(一軍投手)コーチに就任したときに・・・

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