本拠地・大阪球場でホームランを打つために、逆算でつくり上げられた野村克也のバッティング。同じ時代を戦ってきた首位打者7度の張本氏が、その打撃の“すごさ”を徹底解説する。 プロ野球80年以上の歴史の中で、バットのグリップを短く持って名を残したホームランバッターはほとんどいないが、野村さんは王貞治(元巨人)とともにその数少ない1人だ。イチロー(元オリックスほか)でさえ小指を遊ばせるほどバットは長く握っていた。歴代のメジャー・リーガーまで広げてみても、バットを短く握っていたホームランバッターは野村さんと同じくキャッチャーだった元レッズのジョニー・ベンチくらいのものだ。
実際、野村さんは理に適ったバッティングをしていた。まず構えた位置からグリップが下がることなく、そのままテークバックしていく(1〜4)。グリップを下げるというムダな時間がないから、長くボールを見ることができる。弓を引き絞るように左腕がしっかり伸びていき(4)、十分に力をためることができているからパンチ力も生まれる。
スタンスは狭く、インパクトの前後でも・・・