まさか、だった。ヤクルト監督を退任直後、電撃的に阪神監督就任が決定。果たして希代の名将が暗黒時代の阪神をどう立て直すか注目が集まった。これは安芸での秋季キャンプ中のインタビューだ。 阪神のユニフォームは意外と[?]似合っていた
日本シリーズでの腹立たしい思いで決断
──ヤクルトの監督を退いて、間をおかずに阪神からの監督就任要請を承諾されたわけですが、短期間のうちに、またユニフォームを着ることを決意させたものとは何だったのでしょう。
野村 阪神から話があったときには正直、光栄に思いました。と同時に、それほど人材がいないのか、と思ったんですよ。私はもう63歳ですからね、かなり疲れていたんですよ、正直言って。監督というのは、精神力とともに、結構、体力がいる。体力が持つかなというのが、まずあったわけです。そこから考えて、決断までのスタートを切っているわけですが、ネット裏へ下がるとして、もし来年、再来年に監督をという要請があった場合、これから一年一年というのは体力、気力とも老化の一途をたどって、ますます引き受けにくくなるだろう。これも一つの縁ではないかと考えるようになったわけです。
それともう一つ、日本シリーズを見ていて思ったこともあった。始まる前から権藤博、東尾修両監督の対談などをテレビで見ていてね、両リーグのチャンピオンチームの監督の自覚はどこにあるんだろうと思ったんですよ。うぬぼれでも何でもないんですが、あの2人の光景を見ていて、こういうチームに負けたのかと思うと、非常に腹立たしいというか悔しいというか。と同時に、野球そのものの乱れとか、プロ野球界の進むべき方向性の間違いとか、そんなことが頭の中を駆け巡りましてね。それは、私の力でプロ野球を正しい道に戻すには、ことさら力不足ですけど、でも、彼らよりは少しはできるかな、と。
──そのためには、ネット裏にいるのではなく、ユニフォームを着ていたほうがいいと。
野村 というより、着なきゃいけないと思ったんです。それは・・・