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REAL VOICE 捲土重来 2022の決意

オリックス・山岡泰輔 インタビュー「投げられないなら辞めたほうがいい」

 

強い決意が言葉に表れる──。新シーズンに巻き返しを期す男たちの声を届ける新連載。第1回はオリックスの先発の軸として期待されながらも右ヒジを痛め離脱した右腕に迫る。故障、手術、日本シリーズでの復帰登板は、26歳の心をまた強くさせた。
取材・構成=鶴田成秀 写真=佐藤真一、BBM

オリックス・山岡泰輔


責任の葛藤と“一択”の決断


 内野陣が集まったマウンドに高山郁夫投手コーチが向かうと、苦い表情を浮かべた右腕がベンチに引き揚げる。昨年6月22日の日本ハム戦(京セラドーム)は3つの四球で1点を与え、なお一死満塁で緊急降板。わずか1/3回の降板は右ヒジ痛によるものだったが、予兆はあった。1週間前のファームでの調整登板を、わずか1イニングで降板している。

「その(ファームの)試合から痛かったんです。それで病院で診察してもらったのですが、何も(異常は)ないと言われて。だったら『投げないといけない』と自分で思い過ぎてしまったんですよね。あのときの僕は『投げられません』『無理です』と言う勇気がなかった。実際、ファームの試合で痛みが出て、そのあと何日かすると(痛みが)薄れてきて。でも、病院に行かないといけないと思って、言った結果は『何もない』で。何もないのに投げないのは、どうなんだろう……と考えて……。チームの状態も良かったし、そこで何を言って、どうすればいいか分からなかったのが正直なところなんです」

 診断を受けに行ったこと、痛みがあったことは首脳陣に伝えていた。ただ、登板を回避するまでには至らないと決断したのは自分自身だ。だからこそ、その決断に悔いが残る。

「しっかりと自分の痛みを伝え切れなかったんですよね。あの(6月の一軍の)試合で降板した原因は、そこにあると思うんです。言わないとダメだけど、言った結果、投げれば『伝えたのに』となるのも違う気がして……。『無理やり投げさせた』みたいな見え方になるのもイヤだったんです。なんか自分だけで、いろいろ考えてしまったんですよね。あんまり言ってこなかったですけど……、今思えば、あの1週間は、“違う責任”を感じていたのかなとも思います」

 日々、準備を欠かさない中継ぎ投手に対して、週に一度、万全を期してマウンドに上がれる先発投手は、ローテを守る責任がある──。そう自負していた右腕だからこそ、簡単に“回避”の2文字は選択できなかった。それが、あの緊急降板で考えが変わっている。

「何も投げることだけが責任じゃないと分かったんです。無理なら無理と言うのも責任。だから、もう二度と同じことはしない。本当に迷惑をかけた。やってはいけないことでした。結果的に長期離脱で手術までいったわけですから。あのとき(先発ローテを)飛ばしていても、手術になる結果は同じだったかもしれないけど、投げるべきではなかったのは、初回から中継ぎの方たちに負担をかけ、迷惑をかけたことから分かります。ちゃんと伝えて(登板を)飛ばしてもらうところまでいかないといけなかった。それもマウンドに上がる責任なんですよね」

 痛感した思いだが、中嶋聡監督に念を押されたのは、翌日のことだ。

「あの試合の翌日、監督室に呼ばれたんです。そこで言われたのは『忘れるな』。後ろで投げる大変さ、後ろで準備してくれた人たち、ケツを拭いてくれた人たちの思いを『忘れるな』と。僕自身、常に後ろの人たちのことを思って、1イニングでも長いイニングを投げて負担を減らそう、と考えてきたんです。その思いもあって、自分の中で『投げる・投げない』の葛藤をしてしまい……。投げないと判断するのも違う責任の取り方。あの試合のことはこれからずっと忘れません」

 同じ過ちを繰り返さないためには、まずは復帰することだ。2週間後の7月にキャッチボールを再開し、8月にファームで実戦復帰。だが、違和感が拭えない。

「8月に復帰したときは、痛みはなかったんです。でも・・・

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新シーズンに巻き返しを期す男たちの声を届ける連載。

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