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REAL VOICE 捲土重来 2022の決意

ソフトバンク・上林誠知 インタビュー「生かすも殺すも自分次第」

 

不動のものになるはずだった外野の一角は、気がつけば年々遠くなっていった。自分に対して誰よりも厳しく、それでいて不器用。ただ、あふれる人間味と類いまれな打撃センスは天性のものだ。今春も“復活”を期待する声は大きい。
取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭、BBM


2017、18年が一転自分を見失った3年間


 春季キャンプ第4クール2日目(2月16日)。ソフトバンクはこの日も紅白戦を行っていた。最終回の7回、3点を追う紅組は、二死ながら二、三塁のチャンス。ここで上林誠知に打席が回ってきた。1、2打席目はともに一ゴロに倒れた中でヒットが欲しい3打席目、しかも絶好のアピールの場面だ。

 今オフ、工藤公康監督のあとを受けて就任した藤本博史監督は、「横一線」とチーム内競争をあおった。その一方で、外野に関しては、左翼=栗原陵矢、右翼=柳田悠岐のレギュラー確定を明言。残る一枠、中堅を巡る争いは、昨秋から激しさを増していた。もちろん、上林も狙いはただ一つ。となれば、前述の場面、否が応でも力が入る。

 ただ、スイングは変な力みを感じさせず、高橋純平の144キロの直球をしっかりととらえた。打球はぐんぐん伸びてバックスクリーン右へ。グラウンドを一周してベンチに戻ってきた上林からは笑みもこぼれた。

「紅白戦なので、結果とかというよりは自分の中で納得した打席があればいいかなという感じなんですけど。それでも、結果が出るに越したことはない。いい形で打った中で結果がついてくるのが最高。そういった意味では、このホームランは完璧でしたね。今までの中でも結構、会心のほうかなと思います」

 振り返った言葉の端々からも、手応えを感じていることは明らかだった。

 上林にとってここ3年は、本当に苦しいシーズンだった。プロ4年目の2017年に右翼のポジションにハマり、翌18年には全143試合に出場。成績も軒並み前年を上回ってキャリアハイとした。しかし、レギュラー定着を期待されながらも、19年以降は年々出場試合数を減らしている。上林誠知に一体何が起きていたのだろうか。

「19年に関しては、開幕してすぐにデッドボールが当たって。それが一番大きかったですね。1年間ずっと痛かったんで」

 それは4月17日のロッテ戦(ZOZOマリン)だった。2回の第1打席で右手甲に死球を受ける。「モロに骨に当たった感じがした」。一度は打撲という診断を受けるも、後日、右第4中手骨掌側剥離骨折が発覚。結局、最後までこのケガが打撃を、上林を狂わせた。

 ただ、時間がたっても、シーズンが新しくなっても、打撃の調子は上がってこなかった。

2019年4月17日のロッテ戦[ZOZOマリン]で死球を受け、右手を骨折。シーズン最後まで痛みを引きずった。


「20年は開幕が新型コロナの影響で遅れて。19年のケガのこともありましたし、もう1回、自分の考えでやろうと思っていたんです。18年に打ってきているわけなので、ちゃんと自分の考えでできれば問題ないと。状態自体は別に悪くはなかったんですけどね。開幕戦も初めて一番(・右翼)で出ました。でも、ここでまたデッドボールの影響が……。このときは3月の練習試合(20日のロッテ戦、Pay Pay ドーム)で腰(背中)に受けたデッドボール。当たりどころが悪くて、ぎっくり腰にも何回もなったりして。開幕戦でも腰に違和感を覚えて、2、3試合目は欠場。その後、復帰はしましたが・・・

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新シーズンに巻き返しを期す男たちの声を届けるインタビュー連載。

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