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REAL VOICE 捲土重来 2022の決意

西武・今井達也 インタビュー「楽をするな、楽しめ!」

 

この男のポテンシャルを考えれば物足りないだろう。昨季、高卒5年目でキャリアハイの8勝を挙げたが自身も、周囲も満足することはない。さらなる飛躍を目指す今井達也が目指す場所は果てしない。
取材・構成=小林光男 写真=川口洋邦、BBM

西武・今井達也


今季につながるピッチングの新境地


 勝ち負けに一喜一憂しない──。

 5年目の昨季、今井達也は新たな気づきを得た。きっかけはメジャー・リーグ中継を見始めたことだ。海の向こうのベースボールでは先発投手は中4日が一般的だ。そのなかでローテーションを守り、登板回数を増やし、イニング数を稼ぐ。勝利よりも、それが重要視される面がある。今井もそこに先発本来の役割を見いだした。

「自分がどれだけ最少失点で抑えても勝てないときがあります。逆にすごく点を取られても勝利を得ることがある。勝ち負けはあまり自分でコントロールできないものですから。先発は試合の最初から投げる唯一のポジション。やっぱり、できるだけ長いイニングを投げて、極力失点を少なくするというのが本来の役割でしょう。だから、勝ち負けを気にすることはやめました」

 マウンド上で勝敗の意識を消し去る。9月ごろからその境地に達したと言うが、後半戦でスタートから苦しんだことも大きな要因だったであろう。栗山巧が球団生え抜き初の2000安打を達成した9月4日の楽天戦(楽天生命パーク)では3回1/3、7失点KO。同日までの後半戦4試合で防御率8.44と思うようなピッチングができなかった。それが11日のオリックス戦(メットライフ)で快投を見せる。チーム打率トップのオリックス打線を6回まで無安打。7回、先頭の杉本裕太郎に中前打を許してノーヒットノーランの夢はついえたが3安打、13奪三振で2年ぶりの完封勝利を挙げた。以後も大崩れする試合は減少。安定したピッチングが増えた。

「余裕というか、試合中に『勝たなきゃ、勝たなきゃ』と思わなくなりました。気持ちの面で焦りや、投げ急ぐことがなくなり、それが結果にもつながるようになりましたね」

 10月には印象に残るピッチングもあった。15日の楽天戦(楽天生命パーク)だ。前カードは札幌ドームでの日本ハム戦で本隊は北海道から仙台への移動ゲーム。だが、先発する今井は本隊に帯同しておらず、単独で余裕を持っての仙台入りとなっていた。

「疲労が抜けづらいので、移動ゲームって大変じゃないですか。だから、その日はなるべくリリーフ陣を休ませたいと思って。試合前のミーティングから『一人で投げ切る』と思っていました。それで、ホームランで1点は取られてしまったんですけど、最少失点で抑えて。9回まで完投できた試合だったので、すごく良かったなと思います」

 この試合、決して万全の状態だったわけではない。3回まで毎回の3四球と制球が安定せずに苦しいピッチング。127球の“熱投”の裏には冷静な判断があった。左足がインステップ気味になり、腕が横振りになっていることが原因だと気がつくと、縦振りに修正するためにカーブに着目した。腕を上から縦に振らないと投げられないカーブを多投することで、ストレート、変化球の精度が向上。5回以降は1安打1四球で二塁を踏ませないピッチングだった。

「その日のコンディションによって、軸となる球種を確立することも大事だとあらためて学びましたね。この試合は、このボールがカウント球、勝負球になる、と。それが1球種でもあれば、ピッチングは楽になると思いました」

 シーズン最終盤で今季につながるピッチングの新境地を手に入れたことが・・・

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