声援が消えた年から苦しんだ――。ファンを愛し、ファンに愛される背番号19は、昨季それが杞憂だと証明した。年齢的に生涯横浜と言える長期契約。新たな夢は帰ってくる声とともに――。一瞬たりとも油断はしない。 取材・文=武石来人 写真=井田新輔、桜井ひとし 磨きなおした原点
守護神に返り咲き、キャリアハイと言える成績で完全復活を遂げた昨シーズン。セ・リーグの守護神でトップとなるWHIP(1イニングあたりに許した走者数)0.70をマーク。夏場にはプロ8年目にして自己最速の155キロを記録し、体力、気力ともに充実の1年を過ごした。
「率直に実りのあるシーズンになったなと。結果的にキャリアハイ近い数字を残すことができたのは、守護神に返り咲いて、シーズンの中で成長し、自信をつけていけたから」 変化を恐れず、進化を遂げた――
通算200セーブに迫っていた実績豊富な中心選手が、だ。
「それまでの過去2年が非常に思わしくない数字が続いて、僕自身もどかしさを抱えながらのシーズンを過ごしてきました。だから昨年は新たに減量と守護神奪回の覚悟を持って臨んだんです。そのかいあって、開幕から監督から守護神を任されました」 山崎の生命線は直球とツーシームの2球種。その球種別割合がシーズン中に取り戻していった自信を物語っている。苦しんでいた2021年シーズンは2球種投球割合合計81.9%。試行錯誤を重ね、使える球種を探す毎日を送っていた証拠だ。それが昨季は実に97.5%を占めていた。特に見つめ直したのは投球の根幹である直球だった。
「原点である右打者アウトコースの真っすぐに磨きをかけました。(22年の)キャンプでは第1クールの間、すべて真っすぐのブルペンをこなしたことで質が向上したのだと思います」 取り組みが間違っていなかったことは、打者の反応からも感じ取ることができた。
「ファウルの打球の飛ぶ方向からも、前年までよりも(球威が)戻ってきたなと感じることができたので、思い切ってストレートを投げられるようになりました。だから本拠地は狭いと言われる横浜スタジアムですけど、相手に対してツーサイドピッチで真っ向から勝負できたのかな」 さらに8月2日の
広島戦(横浜)では、入団8年目の29歳にして自己最速の155キロをマーク。その登板は山崎自身にとっても大きな意味を持っていた。
「その試合は、味方のエラーがあったんですよ。たった1つの送球ミスだったんですけど、サードの柴田(柴田竜拓)だったかな(9回二死一塁から三ゴロ悪送球で二、三塁)。その瞬間、とにかくランナーをかえしたくないという気持ちがすごく強く湧いてきました。そのおかげで体とうまく気持ちがつながってくれて、最速が出たのだと思っていますし、普段守ってくれている味方がミスをしても、取り返したいという気持ちをより一層強く持つようになりました」(結果はそのあとの打者を投ゴロに打ち取って試合終了)
精神と肉体の一致。それがどの分野においても、成功の秘訣(ひけつ)であることは衆目の事実だ。この気づきこそ・・・
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