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ソフトバンク・又吉克樹インタビュー “ギャップ”こそわが野球人生「投げる1球1球に集中していった結果、ゼロだったというのが一番いいんじゃないかな、と」

 

FA移籍から3シーズン目を迎えた。2年間で初めての経験をし、「いろいろなものを得られた」。そう語る右腕の表情は、以前にも増して頼もしい。マウンドではシンプルに淡々と、仕事をこなす。積み上げてきた数字に、右腕らしさが色濃く出る。
取材・構成=菅原梨恵 写真=湯浅芳昭、BBM


32歳にして初めての経験


 今春初の対外試合となった2月24日の台湾・楽天モンキーズ戦(アイビー)で、又吉克樹は3回に二番手でマウンドに上がった。先頭打者を2球で追い込むと一ゴロに。後続は2者連続三振に斬って取り、何事もなかったかのように平然とベンチに戻った。試合後、小久保裕紀監督が「今日の投手のMVP。(3点をリードした相手)打線がいいなと感じているところで又吉がスパっと切った。それで今日は落ち着いた試合になった」と絶賛する内容で、チームの逆転勝ち(11対4)に貢献してみせた。約1カ月後のシーズン開幕に向けて、上々のスタートと言っていい。

 2021年オフ、又吉は自身のプロ野球人生において大きな決断を下した。「一番は、自分がパ・リーグでどこまでやれるか挑戦したかった。今までとはまったく違うスタイルのチームに行く中で、自分の伸びしろを引き出したいと思ったからです」。12月18日に行われた入団会見の席で、目を輝かせながら国内FA権を行使してソフトバンクに移籍した理由を語った。

 あれから2年を経て、右腕はソフトバンクでの2シーズンを、こう振り返る。

「野球人生の中で初めて体験することが、ものすごく多いなというのは感じます」

 その最たる経験の一つが、22年7月8日の日本ハム戦(PayPayドーム)で負った右足甲の骨折だった。それまで、ケガで長期離脱することのなかった右腕。野球ができないどころか、右足を使うことすらできない生活に、「明らかに機能が落ちて。結局、それを取り戻すのに1年半かかったので……」とこぼした。

 だが、ケガの影響を受けた期間がすべて苦しい時間だったかというと、決してそうではない。というのも、右腕は新しい取り組みを行っていたのだ。

「昨年、初めてウエート(・トレーニング)を始めたんです。野球人生で初めての試み。これまでも遊びでしたことはあったんですが、しっかりとメニューを組んで、というのはやったことがなくて」

 ケガで完全に筋肉が落ち、右足に関しては「機能自体が弱っていた」。状況を打開する手段も限られる中でたどり着いたのが、ウエート・トレーニングだった。

「これはもうウエートを入れるしかないなとなって始めたところ、幸運なことにすぐに体に変化が現れたんです。球速も140キロ台後半が出るようになって、真っすぐが確実に速くなった。もちろん、ただ球速が出ればいいというわけではない。キャッチャーが構えたところにきっちり投げ切れるコントロールとスピードが両立しているボール。結果的に昨季は、7月末に一軍に戻ってからは26試合で防御率1点台(1.57)でしたからね」

 ウエート・トレーニングを取り入れたからこそ、得られた結果。まさに、ケガの功名だった。では、なぜ右腕はそれまで行っていなかったウエート・トレーニングに活路を見いだしたのか。

 右腕に助言を送ったのが小久保監督だった。昨季、二軍で調整する中で、右腕は小久保監督に相談を投げかけた。

「スピードが落ちているというのが自分でも分かっている上で、コントロールを磨きにいくのか、それとももう一度、スピードを取り戻すためにトレーニングをしたほうがいいのか、というのを、(当時二軍監督だった)小久保さんに聞きに行きました。すると・・・

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