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2022プロ野球総決算号 日本一戦士インタビュー

オリックス・宇田川優希インタビュー 心ひとつでボールは変わる「バッターに投げるのが、怖かったんです」

 

大逆転でパ・リーグ連覇を果たし、日本シリーズでも2敗1分けから4連勝で日本一へ。劇的なシーズン、そしてチームの戦いぶりを象徴する存在だ。育成2年目の2022年7月に支配下登録を勝ち取ると、直球とフォークを武器に8月からブルペンを支えて逆転劇の立役者に。日本シリーズでは流れを呼び込む好救援で頂点に導いた。わずか1年で大きく変わった自分の立場。そんな“シンデレラボーイ”の快投を呼んだ確かなものがある。
取材・構成=鶴田成秀 写真=高塩隆、BBM

日本シリーズは4試合登板で計5回2/3を無失点とヤクルト打線を圧倒。シリーズの流れを呼び込んだ


恐怖心からの脱却


 わずか1年前。打者と対戦することに怖さを覚えていた右腕とは思えない。「人見知り」という24歳は躍動感あふれる投球とは対照的に、穏やかな口調。ただ、育成時代に得た教訓こそが、救援登板での信条だ。

──7月に支配下登録されて一軍でフル稼働。リーグ優勝、日本一と、充実のシーズンだったのでは。

宇田川 はい。とにかく成長できたシーズンでした。一軍の試合も経験したことがなかった自分が、CS、日本シリーズの大舞台で投げさせてもらえて。技術というより、気持ちの面で本当に強くなれた1年でした。

──技術以前に気持ちですか。

宇田川 実は育成のときに本当に悩んでいて。大学まで悩んだことはなかったんですけど、ファームで結果が出ず、悩むことが多かったんです。

──昨年のファーム公式戦の登板は1試合。今年も序盤は制球が不安定でしたが、それも“悩み”から?

宇田川 プロのバッターを相手に投げるのが怖かったんです。特に昨年は結果が出ず、バッターが相手になると自分のピッチングができなくて。甘い球を投げれば打たれる。だから、厳しいコースに投げないといけないと勝手に強く意識してしまって。それで腕が振れなくて、フォアボール。ストライクを取りにいくと打たれる。なんで、こうなるんだろう……と本当に悩んでいて……。

──どう打破したのでしょう。

宇田川 技術ではなかった気がするんですよね。心が強くなったことが一番。細かいコントロールは今もないですけど、ストライクゾーンに思い切り投げ込んで空振りを狙う。その気持ちで勝負できるようになったことが大きかったんです。

──気持ちが変わったきっかけは。

宇田川 今年もファームの初登板は打ち込まれて途中降板だったんですけど、そんなときに西村(西村凌)さんが言ってくれたんです。「真っすぐだけで十分だよ」と。「お前は怖いと思っているかもしれないけど、バッターのほうが怖いから。それだけ球威のあるボールを投げているよ。だから思い切って投げていけよ」って。その言葉をもらって、ゾーンで勝負しようと思えるようになりました。そこから怖さがなくなり、楽しめるようになって。だから今年に入ってからなんです。バッターを相手に投げたい、と思えるようになったのは。それで結果も出てきたんです。

──支配下登録され、一軍の打者と対戦する姿からは想像できません。

宇田川 正直、一軍でも怖いって気持ちもありました。でも、一軍でも二軍でも同じだと思って。二軍でやってきたことを発揮したいと思って、一軍のマウンドに上がった。マウンドに行くまではビビッていたんですけど、マウンドに上がったら・・・

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