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【MLB】身体検査で長期契約やり直し、メッツとコレアはWin-Winの関係になれるのか

 

19歳のときに右足にプレートを入れた部分を懸念されジャイアンツとの契約は破談に。メッツとの契約も揺れているが、果たしてWin-Winの関係になれるのか!?


 カルロス・コレア遊撃手、28歳の長期契約にまつわる騒動は、MLB史に残る珍しい事態となった。ジャイアンツと13年総額3億5000万ドルで合意しながら、12月19日身体検査で問題が見つかり入団会見の延期後、破談。スコット・ボラス代理人は24時間も経たないうちに新たにメッツと12年総額3億1500万ドルで合意したが、22日のメッツとの身体検査で再び同じ個所が問題になり、以後、メッツと代理人は妥協点を探る話し合い。この原稿の執筆時(1月5日時点)でも折り合いがつかない。

 おそらく年数も金額も相当削られるのだろう。そもそもコレアとメッツとの契約は大富豪のスティーブ・コーエンオーナーなしにはありえないことだった。メッツにはフランシスコ・リンドア遊撃手、29歳がいる。コレアは素晴らしい選手だが、それは守備の要の遊撃手で打力もあるから。コレアに遊撃手のお金を払い、三塁手で使うのはもったいない話だ。

 しかもメッツには34歳のベテランのエデュアルド・エスコバル三塁手がいて、23歳のブレット・ベイティ三塁手も育ってきている。2019年のドラフト一巡(全体12番目)で、昨季8月メジャー初打席で本塁打を放った。将来スーパースターになる器と見る関係者も少なくない。しかしながらコーエンオーナーは20年暮れのオーナー就任時に「3年から5年で世界一になる」と宣言しており、「私はメッツファンに(勝利を)約束した。約束を果たすためにお金を使わないといけないなら、そうするだけ」と補強を続けた。

 メッツのぜい沢税を含めた23年のサラリー総額は5億ドルに近づき、関係者は1億ドルを超える赤字になると見積もるが、純資産約170億ドル(約2兆3000億円)のオーナーは「世界が終わるわけではない」と平然。ボラス代理人はこのコーエンオーナーの積極姿勢を知っていたため、ジャイアンツとの身体検査で問題が出ても、迷わずにメッツに話を持って行った。

 ハワイでの夕食中、マティーニを飲んでいたコーエンに「三塁手にオリーブを3つ出せるか」と聞き、オリーブ1個1億ドルで即決した。しかしながら再び身体検査がネックに。コレアは19歳のときに右足腓骨(ひこつ)の関節鏡手術を受けていた。メジャー8年間でそれが理由で負傷者リストに入ったことはないが、昨季9月の試合の後、地元記者に懸念を口にしていた。接触プレーの後、しばらく動けなくなったからだ。

「プレートに当たって痺れた。ちょっと怖かったけど、動けたので大丈夫だ」と。腓骨骨折がひどく再びずれる危険性が高い場合はプレートやボルトで固定する。コレアの手術はプレートを使っていた。今後数年間は持ちこたえるかもしれないが、12年は長い。そしていくらボラス代理人が凄腕でもジャイアンツに続き、メッツとも身体検査で破談となれば、新たな球団と長期契約を結ぶのは不可能。

 一方、コーエンオーナーも世界一のためにコレアが必要。本人に前向きな気持ちでメッツのユニフォームを着てもらいたい。わだかまりなく、Win-Winの関係になれるよう妥協点を探っている。

文=奥田秀樹 写真=BBM
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