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【MLB】WBC期間中にいかに新ルールに対応するか、頭を悩ますメジャー球団

 

投手の持ち時間は15秒と20秒になるが、ここでどういう駆け引きが起こるのか……ルール改正で野球に変化が起こる可能性も。しかし、その前にWBC開催で混乱が起きなければいいが[写真はシャーザー]


 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は5回目だが、主力選手が多くキャンプを抜けるチームは対応が大変だ。とりわけ今回はMLB機構がピッチクロック導入、けん制球の制限、極端な守備シフトの制限、大きなベースなど、大きなルール変更を実施する。開幕までに可能な限り選手に慣れておいてもらいたいし、新ルールを念頭に新たな戦術を考え、そのための練習もしておきたい。

 しかし仮に出場国が3月21日の決勝戦まで進出すると、そのメンバーはチームに戻っても3月30日の開幕戦まで残り1週間しかない。首脳陣は頭が痛い。10人前後と、抜ける選手が多いのはメッツ、カージナルス、ドジャース、アストロズなどだ。スター選手が多いから仕方がないのだが、一方でヤンキースは以前からWBCに非協力的で通っており、今回もアーロン・ジャッジは出ず、ネストル・コルテスなど2人ほどにとどまっている。

 不公平で、メッツのバック・ショーウォルター監督は「ひどいけど、どうしようもない。シーズンが始まってから、うちの選手が慣れるまで(他球団が)待ってくれることはないしね」とぼやいている。そこでショーウォルター監督などは個々の選手に、キャンプの前から準備を始めてほしいと求めている。

 具体的にまずは走者なしで15秒、走者ありで20秒のピッチクロックだ。「キャンプの練習時間は限られている。そこで一から始めるのでは遅い」と、フロリダに来るまでにブルペンで時間内に投げる練習を求めている。実際メッツのアダム・オッタビノ投手は30ドルを払って、アマゾンでタイマーを購入した。

 クロックについては、ショーウォルター監督はじめ現場の指導者は、対応が難しいのは投手より打者になると予測している。

 例えばマックス・シャーザー投手は「セットの長さを変え、投げるまでの時間を狂わせ、ピッチクロックを利用して打者を戸惑わせたい」と話している。ここに新たな駆け引きが生まれる。極端な守備シフトを制限しようと、二塁ベースを境に、内野手が両サイドに、2人ずつ立たねばならなくなることについては、外野手を内野の近くに配置し「3:2」ないしは「2:3」で守るチームが出てくるのではと噂になっている。ポジショニングなど、実験的にいろいろ試しておきたい。しかしメッツは4人の内野手、フランシスコ・リンドーア、ジェフ・マクニール、ピート・アロンソ、エデュアルド・エスコバルの全員がWBCで抜けそうで、カージナルスも4人中3人がいなくなる。走塁面でも戦術が大きく変わる可能性がある。投手がけん制球の回数を制限され、ベースのサイズが大きくなれば、走者はよりアグレッシブに次の塁を狙えるからだ。

 投手には20秒があるため、長くボールをホールドし走者の足を凍りつかせることもできない。公式戦で戦い方はどう変わり何を準備しておくべきか。なるべく見落としがないようにしたい。大変なのはキャンプ中のグレープフルーツ・リーグ(フロリダ)とカクタス・リーグ(アリゾナ)の試合は新ルールを採用するが、WBCは従来のルールで行われること。審判も大変であり、混乱は避けられないのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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