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【MLB】サイ・ヤング賞投票の上位投手が誰も出ない、残念なWBCアメリカ代表

 

ア・リーグサイ・ヤング賞のバーランダーは、トミー・ジョン手術やワールド・シリーズの登板を理由にWBCを断った。ほかのアメリカ人投手も同じ傾向が……。野手はオールスターぞろいだけに、出たいと思える大会にする必要がありそうだ


 2022年のサイ・ヤング賞投票で、上位を占めた投手は当然のことながらアメリカ出身者が多い。ア・リーグはジャスティン・バーランダー、ディラン・シース、アレク・マノア、シェーン・マクラナハン、シェーン・ビーバー、ネストル・コルテスで、ナ・リーグはマックス・フリード、アーロン・ノラ、ザック・ガレン、カルロス・ロドン、コービン・バーンズだ。彼らがワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のアメリカ代表に入っていれば、アメリカは真の最強チームと呼べるだろう。しかしながらチームに入ることにしたのはア・リーグ8位のコルテスだけ。

 だが、2月6日に自宅のあるマイアミで練習中に右太もも裏を痛め、出場を断念した。近い将来、アメリカが上記の投手を出すようなWBCになってほしいと思う。

 マーク・デローサ監督がニューヨークポスト紙のポッドキャストで、好投手に出てもらう難しさを説明している。「すべてのチームに連絡を取り誰に出てほしいかは伝えたが、投手は難しい。球団はワールド・シリーズに勝つために頑張っているし、巨額の投資もしている。彼らの事情は理解できる」と言う。

 バーランダーについては直接話したが「昨季はトミー・ジョン手術明けで、ワールド・シリーズまで投げたから」と説明されたと言う。ホワイトソックスのシースについては「まだ大きな契約をする前の選手だから」というのが球団や代理人サイドの返事だった。

 バーンズも同じくFA前で「シーズン優先。開幕戦に向け準備をしたい」と断ったそうだ。一方でドミニカ共和国出身のサンディ・アルカンタラ、メキシコ出身のフリオ・ウリアス、日本の大谷翔平は大型契約の前でも出場する。

 アジアや中米の国とアメリカでは、依然WBCへの温度差があるというのが実情だろう。一方で野手についてはアメリカ代表もすごいメンバーがそろった。マイク・トラウト、ムーキー・ベッツ、ポール・ゴールドシュミットなどMVP選手に加え、ノーラン・アレナド、トレー・ターナー、カイル・タッカーと攻守に優れた選手が多い。

 ゴールドシュミットは「以前はWBCに出ると、キャンプでの調整が難しく、公式戦に悪影響すると言われてきたが、きちんとやれると分かったから」と説明する。2017年アメリカ代表で世界一になった上に、ゴールドシュミットはシーズンもナ・リーグMVP投票3位の活躍だった。

「その後も20年の夏のキャンプは新型コロナで短かったけど20日間で準備できたし、去年のキャンプもロックアウトで短縮されたが問題なかった。野手は早く準備するのに慣れてきた」と言う。

 カージナルスの同僚アレナドも「3年か4年に一度のイベントだし大丈夫。それより前回国を代表して勝ったことで、次も出られるような選手でいたいと願った。それが選手としての目標になった」とキャリアにプラスになるイベントだと語る。

 野手は問題はない。どうすればアメリカ人の超一流の投手たちが数年前から次は絶対に出たいと腕ぶす真の世界一決定戦になるのか。今回、日本かドミニカ共和国がアメリカを完膚なきまで叩きのめし、彼らの闘志に火を付けるしかないのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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