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【MLB】ピッチクロックで劇的に試合時間短縮

 

ピッチクロックの導入で一気に試合時間が短くなったオープン戦。起こりうる違反も次々に出ているが、この制度で得をするのは投手? 打者? どっちだろうか。それとも個人によってそれぞれの影響が出そうだ


 MLBのオープン戦の試合時間がピッチクロック導入で劇的に短縮されている。1年前のオープン戦は平均で3時間1分だったが、今季は2月24日から26日までの最初の3日間、35試合の平均は2時間38分だった。

 最も長かった試合は3時間6分で、これは昨年のMLB公式戦の平均時間と同じ。最も短かったのは2時間7分だった。両チーム合わせて18得点が入ったロッキーズ対ブリュワーズの試合も2時間58分で終わっている。

 MLBでは近年試合の平均時間が常に3時間を超えるようになり、21年は3時間11分と最も長かった。そこでMLB機構はピッチクロックを導入、最初の3日間で69度のピッチクロック違反が起きたが、試合時間も短縮された。中には公式戦で起きたら大変という違反もあった。

 25日のレッドソックス対ブレーブス戦は、9回裏6対6、後攻のブレーブスは二死満塁のチャンス。打者は左打者のカル・コンリーでフルカウントだった。レッドソックスのエリー・マレロ捕手は立ち上がって「走者がスタートを切る、送球は一塁へ」など内野手に声をかけ、そのままピッチコム(サイン伝達のための電子機器)で投手にサインを出し、しゃがむのが遅かった。

 ルール自体は捕手については残り9秒でボックスの中にいればよく、立っていても構わない。一方で、打者は残り8秒で投手に正対し、打つ準備ができていないといけない。打者のコンリーは残り8秒の時点では、バットの先で本塁ベースをトントンとたたいたあと、構えるまでの一連の動作の途中だった。

 ジョン・リブカ球審が両手を上げ、「タイムアウト(時間切れ)」を宣告。コンリーは四球だと勘違いし、一塁に向かって走り始めたが、球審は打者のコンリーを指さし、三振で、引き分けで試合が終わった。二死満塁のチャンスに盛り上がっていたブレーブスファンは大ブーイングである。ブレーブスのブライアン・スニッカー監督は「こういうことがあるから、オープン戦から始めておかないといけない。何があるか事前には予測しきれない」と話している。

 おそらく選手たちは1年前に採用したマイナー・リーグ同様、徐々にピッチクロックに慣れ、違反数は確実に減っていくのだろうと予想する。一方で気になるのはピッチクロックが選手の成績にどう影響するかだ。アストロズのライアン・プレスリーは「投手は連打されたり、ストライクが入らなかったり、その日の調子が悪いと、プレートを外して一呼吸入れたいもの。それができなくなるのはどうなのか」と否定的だ。

 一方で、メッツのマックス・シャーザーは「投手と打者の力関係が変わる。投手がペースを決められる」と大歓迎。これまでなら打者は打席を外し、投手を焦らすことができたが、そうはいかない。ブルージェイズの菊池雄星は「時間が限られることでテンポの面で助かっている。メカニックのことなど考え過ぎずに済むし、すべてをシンプルにできている」と肯定的だ。

 投手によって、プラスの選手、マイナスの選手、はっきりと分かれそう。打者も同じで、パフォーマンスにどう影響するか興味深い。

文=奥田秀樹 写真=BBM
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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