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【MLB】開幕から先発ローテーション投手の藤浪 制球難を克服できるか

 

アスレチックスの先発ローテに入る藤浪。チームもしっかりとした調査で藤浪の能力を把握しており、今季140イニングを目指して投げさせ、中6日で登板機会を与えていく。その中で制球難を克服していきたい


 アスレチックスの藤浪晋太郎投手が開幕から先発ローテーション投手として投げる。オープン戦の成績は4試合に先発し12回2/3を投げ、防御率4.26、WHIP1.58。17奪三振13与四球で、相変わらず制球が定まらないのが気になる。

 とは言え、アスレチックスは開幕投手の最有力候補だったポール・ブラックバーンが右中指の爪の損傷で離脱、ドリュー・ルシンスキーも左太もも裏の張りを訴え、一番手か二番手でスタートすることになった。

 阪神時代からそうだったように、多くの関係者がその才能に魅かれる。スコット・エマーソン投手コーチは「速い球を自在に動かせる。カットしたり、沈ませたり。低めにスプリットを投げたかと思うと、高めに浮き上がる直球を投じたり」と目を細める。メジャー10年目のベテラン、マニー・ピナ捕手は「右打者への内角高めの直球が良い。あの球とスプリットやスライダーをミックスすればうまく行く」と太鼓判を押す。

 しかしながら突然ストライクが入らなくなる。エンゼルス戦など、オープン戦で2度3連続四球を出した。「力みですね。(左肩が)開いて、体の軸に絡まずに手が離れていくのが自分の悪癖。もうちょっとメカニックが安定して、試合中にあれ? と思うことがないようにできれば」と自己分析した。

 藤浪がアスレチックスと契約する前、筆者が話したナ・リーグ球団のあるスカウトは「今のMLBのフロントはアナリティック(データ分析)重視で四球をたくさん出す投手は評価が低い。藤浪を先発として獲得しようというチームは少ないだろう。大方はリリーバーとして見ている」と教えてくれた。

 ところが藤浪自身は先発投手にこだわり、先発で獲得するというアスレチックスと1年契約を結んだ。もっともそのスカウトも藤浪の潜在能力は高く評価していた。「3Aには藤浪のように身体が大きく速い球を投げる投手がたくさんいるが、力いっぱい投げていてフォームはあまり良くない。一方、藤浪はフォームそのものは良いし、スライダー、スプリットで空振りが取れる。3Aどまりの投手はうまく変化球が使えない。加えて彼には高いレベルでの成功体験もある。甲子園で春夏連覇を成し遂げ、阪神でも最初の数年間はトップレベルの先発投手だった」と言う。

 ただ、なぜ急にストライクが入らなくなるのかは謎なのだ。ゆえに先発投手として100球を投げるのではなく、リリーフ投手として1イニング20球を十分に集中して投げれば、メジャーで成功できるのではと見たのである。だが、アスレチックスは先発投手としてチャンスを与えた。マーク・コッツェイ監督は、シーズン序盤は中4日ではなく、中5日か中6日で投げさせると明かした。「日本からアメリカに来るだけで、環境面で多くが変わる。だからルーティンはこれまでと同じにしてあげたい」と説明する。

 もちろんアスレチックスは昨年藤浪が阪神で107回1/3しか投げていないことや、2019年から21年もイニング数が3ケタに届いていないことを知っている。先発だからと、急に増やせない。藤浪自身も「140イニングを投げられれば」と、今季の目標を定めている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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