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【MLB】菊池雄星、5年目を飛躍の年にできるか OP戦防御率0.87、31奪三振

 

自身の投球フォームをオフの間、細かく分析し改良に成功した。あとはオープン戦の調子をそのままシーズンにつなげるだけだ


 ブルージェイズの菊池雄星が最高のキャンプを送った。オープン戦は7試合、20回2/3を投げ2失点。防御率0.87、31奪三振はいずれもメジャートップの数字だった。キャンプが始まった時点では先発五番手を争う立場だったが、圧倒的なピッチングで勝ち取った。

「去年できなかったので、先発ローテーションを1年間守りたい。世界一を目指せるチームで、貢献したい」と目標を口にしている。

 今年は3年総額3600万ドルの契約の2年目。球団首脳陣も胸を撫でおろしている。菊池が良くなった理由は3つある。まずはメカニック。オフの間、アリゾナの自宅の庭に設置したブルペンで制球力の向上に取り組んだ。スローモーションカメラで投球フォームを撮影し、ラプソードでデータをチェックしながら、良いフォームで良い球が投げられているかどうかを確認した。その結果、腕の振りが変わった。

 菊池は「腕の振りが少し短くなっていると指摘する人もいるけど、別に短くしようとしたわけではない。頭にあるのは、投げたときに身体の勢いがどの方向に向かっているかで、真っすぐ捕手に向かうようにと意識した。それができれば、腕の振る角度も良い位置に収まってくる」と地元記者に説明している。

 2つ目はリリーフ経験で体得した攻撃的なアプローチ。昨季は8月にブルペンに配置転換され、12試合に登板し、18回1/3で33奪三振だった。4本塁打は浴びたが、悪くなかった。菊池は「ブルペンでは10球練習しただけで、試合に出ないといけないこともある。先発投手だと準備に1時間から2時間もかけられる。でも実際、短い時間でも同じような球を投げられた。そのときの経験を生かしたい」と言う。

 3つ目はピッチクロックと相性が良いこと。「時間が限られているので、テンポの面で助けになっている。メカニックのことなど考え過ぎずに済む。すべてをシンプルにして投げている」と本人。オープン戦では、ほとんどの投球をクロックの残り4秒か5秒で、余裕をもって投げ始めていた。

 ブルージェイズのジョン・シュナイダー監督もピート・ウォーカー投手コーチも「フォームは安定しているし、投げれば投げるほど良くなっている。とても励まされる」と笑顔で話していた。圧巻だったのは3月23日のツインズ戦、5回を投げ、3安打1四球無失点、9奪三振。特にこれまで苦手にしていたバイロン・バクストン、カルロス・コレアといった右の強打者を真っすぐで圧倒していた。

 過去を思い起すと、再び突如制球を乱し自滅するのではと心配になるが、メジャー5年目で環境にも慣れ精神的にも余裕があるのだろう。17日のフィリーズ戦の登板後は地元紙の記者に通訳を付けずに対応した。

「I am very happy with where I am at right now,feeling free to let loose & attack hitters in stead of thinking about mechanics(今の状態に満足している。メカニックを気にせず、思う存分打者を攻めていけている)」と説明している。

 ひょっとしたら今年こそ、菊池が才能を生かして、メジャーで飛躍できるシーズンになるのかもしれない。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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