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【MLB】投手の投球間の時間が著しく短縮、肩肘への影響は大丈夫か?

 

ピッチクロック導入で投手の投げる間隔が短くなって試合時間が短縮された。これにより投手の肘、肩に負担がかかるのでは、という懸念も出てきたが……


 スタットキャストのデータによると、今季はピッチクロック効果で投手の投球間の時間が著しく短縮されている。AP通信によると、昨季平均で一番長かったのはカージナルスのジオバニー・ガイエゴスとヤンキースのジョナサン・ロアイシガの25.8秒、エンゼルスの大谷翔平は21.7秒だった。

 ピッチクロックはご存じのように捕手からの返球を投手が受けた瞬間にスタートし、投手が投球動作に入ったときに止まる。走者がいないときは15秒以内、走者がいるときは20秒以内に投球動作を開始しないといけない。これに対して、投球間の時間は投手がボールをリリースした瞬間から、その次のボールをリリースするまでを計る。

 ゆえに約6秒ほど長くなる。投球動作に入ってからリリースされるまでが約1.5秒、ボールがミットに届くまでは約0.5秒、捕手がミットからボールを抜き取り投げ返したボールが投手に届くまでが約4秒だ。今季ここまで投球間の平均時間が特に短いのはレイズのクーパー・クリスウェルで11.1秒。長いのはフィリーズのアンドリュー・ベラッティで19秒。

 大谷は15.3秒になり、1年前より6.4秒も短縮された。そのほかではホワイトソックスのマイケル・コペックは21.1秒から13.2秒、レッドソックスのタナー・ハウクは20.3秒から13.1秒に短縮された。ピッチクロックのお陰で試合のスピードアップが実現、成功だったと言われている。

 とはいえ、まだ喜ぶのは早いかもしれない。というのは投手で負傷者リストに入った人数が増えているからだ。ブリュワーズのブランドン・ウッドラフ、マリナーズのロビー・レイ、アストロズのホセ・ウルキディなど最初の32日間で182人と、昨年より14.4%も上昇した。

 2018年に比べると62.5%の増加である。肘が67人、肩が57人。ピッチクロックが原因と特定することはできないが、少なくとも今季は初採用ゆえ、シーズンを通してきちんとモニターしていく必要があるだろう。というのはメッツのマックス・シャーザーはじめ一部の関係者が、投手のケガが増える恐れがあるとキャンプ前から警告を発していたからだ。

 そもそもピッチクロック導入となれば、ポンポン投げ込まないといけないため、真っすぐの球速が落ちると予測されていた。しかしながら、4月の平均球速はむしろ速くなった。これを6カ月続けて大丈夫なのかということだ。

 シャーザーは「夏場になって、疲労が蓄積し、ケガをする投手が増えるかも」と危惧する。一方でプラス効果を口にする人もいる。試合が平均で25分も短くなったため、162試合で計算すると、選手がフィールドに立つ時間が67.5時間も短くなり、試合数にすると22〜25試合分も削減される。その分ゆっくり休めるはずだと。

 さらに投球間の時間が5秒から8秒短くなっても、大して変わらないという見方をする人もいる。先発投手の仕事はシーズンを通してローテーションを守り、試合を作ること。どちらの言い分が正しいかは、23年シーズンが終わるまでは分からないのだと思う。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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