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【MLB】名門カージナルスが5週間で正捕手コントレラスをDH専任

 

名捕手、モリーナの後継としてカブスからコントレラスを獲得したが……。カージナルスはこの弱点をどう克服するだろうか


 カージナルスはワールド・シリーズ優勝11回の名門である。2013年以降、世界一から遠ざかっているが、それでもこの9年間で4度の地区優勝、ポストシーズンに6度進出した。ラーズ・ヌートバーのようにファームから良い選手がたくさん育ってきており、ポール・ゴールドシュミット、ノーラン・アレナドなどトレードでスター選手を獲得している。

 抜け目のないチームのイメージだが、実はFA市場で選手を獲るのは苦手。デクスター・ファウラー、マイク・リークなどうまくいかない。そして昨オフ、5年総額8750万ドルで獲得したウィルソン・コントレラス捕手もつまずいている。5月6日、球団はコントレラスを開幕からわずか5週間で捕手のポジションから外すと発表した。正捕手は同球団で5年目のアンドルー・キズナーに任せ、3Aからトレス・バレアを昇格させ控え捕手とした。

 コントレラスはDHに回る。オリバー・マーモル監督は「われわれは話し合った末、うちの投手のことをよく知っている捕手がマスクをかぶったほうが助けになると判断した。今のうちは試合に勝っていかないといけない」と言う。シーズン前の予想は地区優勝の本命だったのだが、その日も負けて8連敗。10勝24敗はその時点でナ・リーグ最低の成績だった。

 弱点は投手陣。防御率4.70は30球団中21位、先発投手の防御率5.44は24位だった。とはいえ、今この時期にトレードで他球団から即戦力の投手を取るのは無理。「われわれは試合の内容を見て決めた。うちのやり方について、ウィルソンはまだ学んでいる途中。違うチームから来てすべてをすぐに把握するのは大変」と説明する。

 コントレラスはカブス時代に3度オールスターに選ばれた捕手だが、守備は得意ではない。リード面も評価は高くない。難しいのは、彼が殿堂入り間違いない名捕手ヤディア・モリーナの後継者になること。ジョン・モゼリアク編成本部長もその難しさをよく理解していなかった。

「ヤディアがいたから長い間、われわれは捕手のことは考えなくても良かった。フィールドにコーチがいるようなものだった」

 他球団でも名捕手ジェイソン・バリテックが引退した12年のレッドソックス、バスター・ポージーが去った22年のジャイアンツは成績を急に落とした。昨オフ、カージナルスはアスレチックスの攻守に優れたショーン・マーフィー捕手をトレードで獲得するチャンスがあった。しかしヌートバーや、有望な若手投手を交換に要求されたため破談になった。

 12月初旬、モゼリアク本部長とマーモル監督はコントレラスと面談、本人が守備の面でももっと上達したいというのを聞いて契約した。だが判断が甘かった。今マーフィーはブレーブスで大活躍、チームも25勝12敗とナ・リーグで最高の成績。メンツにかかわるため、コントレラスをこんなに早く捕手の座から外したくなかったはずだ。

 しかしほかに打開策はなかった。首脳陣はいずれコントレラスを捕手に戻すというが、試合に出ないで守備のスキルを上げられるのか? ちなみに打撃でも2本塁打で長打率は.391と、今一つの状態である。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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