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【MLB】トレードで一転、オリオールズで桧舞台を目指す藤浪晋太郎

 

最弱のアスレチックスから、今季好調のオリオールズへ。1年目からプレーオフ出場のチャンスをつかんだ藤浪は、アスレチックスで打たれても投げ続けるという恩恵を受けたことが、トレードにつながった


 藤浪晋太郎がオリオールズに移籍した。現地時間7月26日終了時点で62勝40敗とア・リーグ最高の成績だ。とはいえ、このチームに具体的にどこが強いという部分はない。打撃力ではOPS(出塁率+長打率)は.739で全体12位、投手力では防御率は4.19で16位である。

 持ち味は接戦に強いこと。1点差試合は19勝10敗で、クローザーのフェリックスバティスタが39試合に投げて5勝1敗28セーブ、防御率0.92。セットアッパーのイエニエル・カノが44試合に投げて1勝2敗4セーブ、防御率1.82。藤浪は彼らとともに、勝利の方程式に組み込めると期待されている。

 加えてアドリー・ラッチマン捕手やガナー・ヘンダーソン三塁手など、若くて将来性のある選手が多い。マイナーにもベースボールアメリカ誌の若手有望株ランキングで、トップ77人に7人も入るほど層が厚い。今季はヤンキース、アストロズなどア・リーグの強豪チームが不振で、オリオールズがたまたまトップに立っているが、ジョン・アンジェロスオーナーもマイク・エライアスGMも、まだ今年は優勝を狙うシーズンではないと考えていた。

 ゆえに今季の開幕時のサラリー総額は29位の6100万ドル。エライアスGMも優勝のために、このトレードデッドラインで若手有望株をたくさん放出する考えはないようだ。補強ポイントは先発投手だが、今後もすでにいるカイル・ブラディッシュ、タイラー・ウェルズ、カイル・ギブソンらを軸に戦う。いずれにせよ藤浪にとっては素晴らしいトレードだった。

 メジャーで最も弱いチームにいたのに一転、桧舞台で投げるチャンスが巡ってきた。幸運だったのはアスレチックスで打たれても、打たれてもチャンスをもらえたこと。アスレチックスのマーク・コッツェイ監督は移転をもくろむオーナーの考えで弱いチームを引き受けることになったが、目標を切り替え、才能ある選手に辛抱強く機会を与え続けた。

「自分の願いは、今から5年、10年が経って、選手たちが、あなたがうまく指導してくれたおかげで今でもメジャーでプレーできていると言ってきてくれること。もちろん監督としてチームの不成績の責任は負うけど、今一番力を入れているのは選手を育てることなんだ」と話した。

 藤浪についても先発でうまくいかなくても、悪く言うのでなく、試合終盤、中盤、オープナーといろんなシチュエーションで使った。レパートリーにツーシームを入れてはどうかなどアドバイスもした。「フジの持ち球は素晴らしい。彼のためにあらゆる手段を尽くしたい。あとでこうしておけばよかったと後悔したくないからね」。

 辛抱が実って成績が安定し、オリオールズへのトレードが実現した。25日のフィリーズ戦、同点の7回から登板。昨季ナ・リーグ本塁打王のカイル・シュワバーをスプリットで空振り三振に仕留めるなど2イニングを完ぺきなリリーフ。

 オリオールズのブランドン・ハイド監督から「ファンタスティック!」と声を掛けられた。藤浪は「毎回言ってもらえるように」と笑顔を見せている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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