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【MLB】トレードデッドライン、エンゼルス以外の日本人所属球団のそれぞれの思惑

 

日本人メジャーでは大谷に次いで、2番目にトレードの可能性が高かった前田健太。しかしチームはプレーオフ進出を目指し、経験豊富な右腕をトレードに出さなかった


 トレードデッドラインでは日米を問わず、大谷翔平のエンゼルスの動向に最もスポットが当たったが、日本のファンにとっては、ほかの日本人選手の所属球団の動きも気になったのではないか。

 2022年はパドレスのダルビッシュ有がポストシーズンでのナ・リーグ優勝決定シリーズまでコマを進めた。果たして今年、桧舞台に立つのは誰か? トレードデッドラインで良い補強ができた球団はどこか?

 大谷のようにトレードされる可能性があったのが、ツインズの前田健太だった。前田もこのオフにFAの権利を取得する。トミー・ジョン手術からの復帰で序盤は苦しんだが、直近の7試合は先発して37.2イニングに投げ2勝2敗、防御率2.63、51奪三振。三振奪取率が高く、ポストシーズン経験が豊富なのも魅力だ。

 ツインズではほかにもソニー・グレイがFAになるが、スモールマーケット球団ゆえ両者を引き留める資金力はなく、2人とも去ってしまうかもしれない。そこで他球団からのオファーを聞いた。補強ポイントはブルペンと右の外野手。しかしながら大きなトレードはまとめられなかった。

 一つには確実に地区優勝を成し遂げるために好調な前田は出せないと考えたのだろう。加えてデレク・ファルビー編成本部長は「売り手になるはずだった球団が買い手に転じ、選択肢が著しく減った」と説明している。

 例えばダルビッシュ有のパドレスだ。防御率2.50の先発投手ブレイク・スネルと、0.89のクローザー、ジョシュ・ヘイダーがいて市場の目玉商品だった。だが7月は15勝9敗の好成績で特に28日から30日に強豪のレンジャーズをスイープして気が変わった。それでも8月2日終了時点で54勝55敗の借金1個、ナ・リーグ西地区では首位ドジャースに8ゲーム差をつけられ4位だ。ナ・リーグのワイルドカードの3つ目のスポットまで4ゲーム差である。

 鈴木誠也のカブスもマーカス・ストローマン投手、コディ・ベリンジャー外野手が目玉だったのが、21日から29日の8連勝で買い手に転じた。彼らは55勝53敗とナ・リーグ中地区でレッズ、ブルワーズに次ぐ3位。レッズとの差は3ゲームだからチャンスはある。

 ただ今回のトレード市場は売り手市場で、2人ならかなり優秀な有望株が取れたはずで、24年のチームがもっと良くなっていたのは確かだ。菊池雄星のブルージェイズは60勝49敗でア・リーグワイルドカード圏内。ゆえにカージナルスから剛腕ジョーダン・ヒックス、ポール・デヨング遊撃手を補強した。妥当な動きだ。

 一方で同じ地区の吉田正尚のレッドソックスは動かず、ボストンの地元メディアはハイム・ブルーム編成本部長を批判していた。レッドソックスは21世紀になって最多の4度の世界一に輝くビッグマーケット球団。毎年優勝を狙うべきなのだが、レイズ出身の本部長は「着々とファームの若手が育っている」と慎重だ。

 とはいえ就任4シーズン目で、21年はア・リーグ優勝決定シリーズまで進んだが、20年と22年は最下位。今季もここまで地区4位だ。「もっと切迫感を持つべきじゃないか」と記者たちは不満なのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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