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【MLB】1年目から好成績の吉田正尚 さらなる飛躍のカギは打球角度

 

移動などでの疲れも出たが、うまく乗り越え好成績を残した吉田。来季以降の活躍も期待される


 レッドソックスの吉田正尚選手が9月27日終了時点で、打率.288、15本塁打、71打点の成績を残している。23日のホワイトソックス戦では好投手ディラン・シースの高めの真っすぐをしっかり打ち返し、今季13度目の猛打賞。地元テレビ、NESNの解説者は「速い球に遅れず、しっかり打ち返す。吉田ならではのバッティング。後半は調子を落としていたけど、この1週間は良いスイングが戻った」と称賛した。

 その一方で名門球団の中軸打者として契約したから期待値が高い。「今季良くないときは内野ゴロがとても多かった。吉田の打球角度(3.7度)は、規定打席に達している打者では6番目に低かった(メジャー平均は12.2度)。もっと角度を付けられれば、長打も打点も増えるはず」と注文も付けられていた。

 デビュー時は持ち味を出せた。NESNは今世紀になってメジャー最初の50試合で85度以上出塁し、25三振以下は2001年のマリナーズのイチローと、今年の吉田だけだと、1年目からMVPに輝いたオリックスの先輩を引き合いに出した。

 吉田は50試合で61安打、23四球、3死球、22三振。イチローは83安打、8四球、4死球、14三振だった。しかしイチローと違い、後半は失速し、スタメン落ちもした。アレックス・コーラ監督は「休ませることが良いと考えた。疲れているのはゴロが増えているのを見れば分かる」と説明した。

 吉田も移動による疲れを認めた。ボストンはアメリカ大陸の端っこで、どこに行くのも移動距離が長いし、時差もある。吉田はルーティンが多く、たいてい球場に来るのが一番早く、帰るのは一番遅いタイプ。睡眠時間を確保し、1年目からすべてを思いどおりにやるのは難しかった。とはいえ、2年目の来季はこの環境にアジャストし、フルシーズン暴れてくれるのではないかと期待する。

 アドバンテージは特殊な形状を持つフェンウェイ・パークだ。この球場でプレーするレッドソックスは過去26度も首位打者を生み出してきた。うち18度はテッド・ウィリアムスやウエイド・ボッグスなどの左打者である。レフトは狭く、11.27メートルの高い壁「グリーンモンスター」がある。2人ともこの壁に当て二塁打を稼いだ。コーラ監督もシーズン中「グリーンモンスターをうまく使っている」と吉田の反対方向への打撃を称賛した。

 6月30日から7月14日は8試合連続のマルチ安打。これはレッドソックスの左打者では1940年のウィリアムス以来の偉業だった。そしてこの時期はOPS(出塁率+長打率)でもア・リーグの4位につけた。同僚のロブ・レフスナイダーは絶好調時の打撃に「大概の左打者は引っ張りにいって、それでも反対方向に打つ技術は持っていない。しかしながら吉田は手が残っていて、遊撃手の頭を越す強い打球を打てる。小さな身体でなぜそんなことができるのか? アメリカの打者は彼のスイングを研究することになる」と舌を巻いた。

 先輩のウィリアムスは「TheScienceof Hitting(打撃の科学)」という著書を1970年に出版した理論派だった。吉田の打撃術もアメリカ球界にインパクトを与えられれば、と期待したい。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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