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【MLB】抜け目ないブレーブス、欲しい選手のため要らない選手の契約も引き受ける独自路線

 

ユニークな補強をしているブレーブスのアンソポロス編成本部長。24年も世界一にもっとも近いチームとして君臨しそうだ


 ブレーブスの46歳のアレックス・アンソポロスは、メジャー2年目だったロナルド・アクーニャ・ジュニア外野手と2019年に8年総額1億ドルの長期契約を結ぶなど、実に抜け目のない編成本部長だ。アクーニャ・ジュニアのメジャーでの在籍年数は現在5.1年。23年シーズンの成績は打率.337、41本塁打、106打点、73盗塁でナ・リーグMVPに選ばれた。

 長期契約を結んでいなければ24年シーズン後にFA権を取得、まだ26歳になったばかりだから、FA市場で10年総額3〜4億ドルの契約は間違いなかった。しかしながら24年の年俸は1700万ドルで、これが26年まで続く。27年、28年も球団に同額で選択権があるため、この調子なら間違いなく行使するだろう。

 ほかにもオジー・オルビーズ二塁手と7年総額3500万ドルで契約するなど、若い有能な選手と値段が上がる前にきっちり長期契約を結んでいる。そのアンソポロス編成本部長がこのオフ、興味深い動きをしている。大谷翔平山本由伸のFA市場での争奪戦に話題が集中する中、トレード市場で独自の路線を行く。本当に欲しい選手を獲るために、他球団の不要な選手とその契約も引き受け、その不要な選手はすぐにトレードしてしまうのである。

 具体的にはマリナーズのジャレッド・ケレニック外野手が欲しかった。メジャー3シーズンで打率2割ちょっと、32本塁打だが、スターになるポテンシャルを持っている。そこで左腕マルコ・ゴンザレスと24年の年俸1225万ドル、エバン・ホワイト一塁手と24〜25年+26年のバイアウト分も含めた1700万ドルを引き受けた。

 ホワイトはエンゼルスに再トレードでお金も全部エンゼルスが払ってくれるが、ゴンザレスの分はブレーブスが950万ドルも負担した上でパイレーツに譲渡した。ホワイトのトレードでは交換にエンゼルスからデビッド・フレッチャー内野手とマックス・スタッシ捕手を獲得。フレッチャーは24年ユーティリティーの内野手として起用する予定だが、スタッシは要らない。そこで24年の年俸700万ドルのうち500万ドルを負担し、ホワイトソックスに献上した。さらにはトレードでパドレスから左腕レイ・カーと指名打者のマット・カーペンターを獲得。欲しかったのはカーで、対左打者の被打率.161で、メジャーでの在籍年数は0.1年の計算のためFAまであと6年もある。

 必要ないカーペンターは引き取ってくれるチームを探したが見つからず放出、550万ドルの年俸のうち400万ドルを払う羽目になった。合計で要らない選手のために1850万ドル(約26.5億円)を払うのは愚かに見えるかもしれないが、そうしないとケレニック、フレッチャー、カーと必要な選手をトレードで手に入れることはできなかった。

 FA市場でビッグマーケットチームがマネーゲームに奔走し何億ドルという話をしていることを考えると、1850万ドルというのは大した出費ではないように見える。ブレーブスは本当に抜け目ない。やはり24年も優勝候補の最右翼なのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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