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【MLB】走る大谷にとって朗報 MLBは野手の走塁妨害を厳しく取り締まる方針

 

内野手の走塁妨害を厳しく取り締まるMLB。それによりアグレッシブな走塁が増えて、より娯楽性の高い試合が増えていくはずだ


 ドジャースの大谷翔平が3月6日のホワイトソックス戦で積極的な走塁を見せた。初回は一塁ベース上から、次打者の左犠飛で二塁を陥れた。2回も二死一、三塁で、初球にすかさず二盗、その間に三塁走者が生還し、足で得点を呼び込んだ。

 デーブ・ロバーツ監督は「翔平には走る能力がある。私は彼にアグレッシブにプレーするように伝えている」とご機嫌だった。野手専念の今季、大谷は足で魅せることに意欲的だ。その大谷にとって朗報なのは、今季は走塁妨害を審判が本来の野球規則どおりに厳しく取り締まるよう、MLB機構が指導していることだ。

 規則では、野手はボールを持っていないとき、あるいはボールを処理する行為をしていないときに、走者の走路を妨げてはならないことになっている。そもそもそういった行為に出れば、かつては走者に体当たりを食らわされたり、スパイクで足などを削られたりした。しかしながら2015年のポストシーズンでドジャースのチェイス・アトリーがメッツのルーベン・テハダ遊撃手をスライディングで骨折させたプレーを契機に、MLBでの危険なスライディングは激減した。

 それを良いことに、近年は野手が膝や足を使って巧妙にベースをブロックするようになっている。ブレーブスのオジー・アルビーズ、フィリーズのブライソン・スコットなどがそういうプレーをする。昨季パイレーツのベテラン外野手アンドルー・マカチェンは現地記者に「今のままだと、走者は野手をスパイクするしかない。ルールがあるのだから、ケガ人が出る前にきちんと取り締まるべき」と訴えていた。

 オフになり、MLB機構は24年からは厳しく取り締まると決定。先月、30球団の監督に通達した。ベースを巧みにブロックするのも野手の職人技と考えられてきたが、そういう考え方を一掃し、大目に見たりもしない。ベースを跨ぐのはいいし、前か後ろに立つのもいいが、走路を塞いではならない。

 微妙な点は、送球が妨害になりそうなところに来たり、あるいはショートバウンドで、膝をついて捕球したいときだ。妨害だと見なされないよう注意して動かないといけない。判定は審判に一任され、ビデオレビューの対象とはならない。

 タイガースのAJ.ヒンチ監督は「ゲームが変わったということ。現場のわれわれは変化に対応しないといけない」と話している。走塁妨害が宣告されれば走者はもちろんセーフ。一塁手が帰塁しようとした走者に妨害を働いた場合は走者は二塁に進む。走者が三塁ベースを回ったあと、三塁に戻ろうとして妨害されたときは、本塁生還が認められる。

 なぜMLBは今になって、走塁妨害を厳しく取り締まろうとするのか。23年、MLBはベースを大きくし、牽制球の機会を制限し、アグレッシブなベースランニングを奨励、スピードでプロ野球の娯楽性を高めたいと考えた。結果、昨季は盗塁を試みる回数が32.5%も増えたが、もっともっと増やしていきたいのである。

 大谷に限らず、走れる選手にとっては大歓迎。走塁でケガをするリスクも激減する。ヒンチ監督は「ピッチクロックと同じ、慣れてしまえば問題はない」と話している。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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メジャーから発信! プロフェッショナル・アイデアの考察[文=奥田秀樹]

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